2004年02月27日(金) 23時58分

松本被告に死刑判決、弁護団は控訴して辞任（読売新聞）

　地下鉄サリン、松本サリン、坂本堤弁護士一家殺害など１３事件で、殺人罪などに問われたオウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫被告（４８）の判決公判は、２７日午後も東京地裁で続けられ、小川正持（しょうじ）裁判長は、松本被告を一連の事件の首謀者と認定し、求刑通り死刑を言い渡した。

　小川裁判長は、「救済の名の下に日本国を支配して自らその王となることを空想したもので、犯行の動機・目的はあさましく愚かしい限りというほかなく、極限とも言うべき非難に値する」と断罪した。

　一連のオウム事件で死刑判決は１２人目。これで、起訴された１８９人全員の１審判決が出そろった。

　判決を受けて、弁護団は即日控訴するとともに、１２人全員の辞任を表明。これに代わって、松本被告の子どもの就学を巡る行政訴訟で代理人を務めた松井武弁護士（第２東京弁護士会）が同日、松本被告の私選弁護人として選任届を東京地裁に提出した。

　この日の判決は、１３事件すべてについて「松本被告の指示・命令」を認め、「弟子の暴走」とする弁護側主張を全面的に退けた。

　１２人の死者を出し、量刑のうえで最も影響が大きい地下鉄サリン事件については、「被告の専用車の中で、故村井秀夫元幹部らが、警察の捜査を阻止するために地下鉄にサリンをまくことを提案すると、松本被告は『パニックになるかもしれないな』と言い、村井元幹部に総指揮を執るよう命じた」と指摘。「遠藤誠一被告に『サリン造れよ』などと言い、サリン生成を念押しした」とした。

　また、教団への強制捜査の端緒となった仮谷清志さん拉致事件では、「仮谷さんを拉致し、教団の在家信者だった仮谷さんの妹の居場所を聞き出そうと考え、拉致や麻酔薬の注射を指示した」と認定した。

　量刑の理由では、事件の背景事情に触れ、「松本被告は国政選挙に出たが惨敗したため、教団武装化による勢力拡大を図ろうとし、日本を支配して王になることを空想した」と指摘。「この空想の妨げになると見なした者は、教団の内外を問わず敵対視し、その命を奪ってまで排斥しようとした」と断じ、「冷酷非情で残酷な犯行を長期にわたって繰り返しながら、ついには無差別大量殺人に至るまで暴走し、人々を極度の恐怖に陥れた」と指弾した。

　判決はまた、事件の遺族・被害者には、「松本被告に命を奪われた人々は誰１人として落ち度はなく、人生を無残に奪われた無念さは言葉では表現できようはずもない。遺族の精神的苦痛は、わずかでも和らげることすらできない」と深い配慮を示し、「処罰感情がこれ以上ないほど厳しいのは当然」と述べた。

　◆オウム事件捜査＝警察庁によると、１９９５年３月の地下鉄サリン事件以降、全国の警察が摘発したオウム真理教の信者は５００人以上に上る。昨年も公安調査庁の立ち入り検査の際、書類を裁断した大阪道場の出家信者ら１７人が逮捕された。警視庁では現在も、刑事部が、特別手配中の平田信（３８）、菊地直子（３２）、高橋克也（４５）の３容疑者を追跡している。（読売新聞）

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040227-00000011-yom-soci