2004年02月27日(金) 12時40分
<鳥インフルエンザ>京都で鶏1万羽死ぬ 一部から陽性反応(毎日新聞)
京都府は27日、同府丹波町の採卵養鶏場で今月20日以降鶏が1万羽余り死に、鳥インフルエンザの簡易検査の結果、一部が陽性反応を示したと発表した。府は27日、この採卵養鶏場に卵と鶏の移動自粛と、既に出荷した卵の自主回収を要請。隣接の大阪府、兵庫県、福井県を含む半径30キロ以内の養鶏場にも、同様の移動自粛を要請した。国内では山口県と大分県で鳥インフルエンザ感染が発生しており、京都で正式に確認されれば3例目となる。
府畜産課によると、鶏が大量死したのは、兵庫県姫路市に本社のある採卵養鶏会社「浅田農産」(浅田秀明社長)の出先の採卵養鶏場。26日夜に「鶏が大量に死んでいる」と府に匿名電話があり、27日未明から立ち入り検査と簡易キットによる検査を実施。持ち帰った死んだ鶏3羽すべてと、生きた鶏9羽中、2羽からインフルエンザ感染の疑いを示す陽性反応が出た。
府に対しこの採卵養鶏場は「今月20日以降、毎日約1000羽の鶏が死んでいた」と話しているが、府へは届けていなかった。府内トップクラスの約19万羽を飼っており、1日に約16万個の卵を出荷していた。
府は中央家畜保健衛生所(京都府城陽市)でウイルス分離検査をして、ウイルスが確認された場合、サンプルを独立行政法人動物衛生研究所(茨城県つくば市)に送り、確定検査を受ける。府は養鶏場の従業員や出入り業者など濃厚接触者を対象に健康検査を実施することも決めた。
国内では1月に山口県阿東町で79年ぶりに鳥インフルエンザが発生し約6000羽が死んだのに続き、今月には大分県九重町でも鶏愛好家が飼っていたチャボ7羽が鳥インフルエンザで死んでいる。【山崎明子、野上哲】
◆解説◆経路特定は困難
鳥インフルエンザが、京都へも飛び火した可能性が強まった。発生場所は山口、大分と西日本に集中しており、いずれも感染経路を特定できていない。
鳥取大農学部の伊藤寿啓教授(獣医公衆衛生学)は「3カ所相互の関連はない」と見ている。山口は感染の封じ込めに成功し、2月18日に終息宣言が出された。大分も現時点では、周辺への感染が確認されていない。「鳥インフルエンザが流行しているアジアから、何者(鳥や人)がウイルスを持ち込んだと考えるのが自然だ」と指摘する。
伊藤教授は自然環境研究センターと共同で、山口の感染経路を探るため養鶏場周辺の野鳥の血液を調べているが、これで分かるのはウイルスに感染した経験の有無で、経路特定は難しい。
山内一也・東京大名誉教授(ウイルス学)は「野鳥のウイルス保有状況や、人の移動をきちんと調べると同時に、飼育関係者は家きんの異常を見つけたら、すぐに家畜保健衛生所などに連絡すべきだ」と、迅速な対応の重要性を強調する。
岐阜聖徳学園大の坂井田節教授(家きん学)も「渡り鳥が運び役なら、鳥インフルエンザは日本のどこで発生してもおかしくない。鶏舎に渡り鳥や野鳥が入り込めない工夫をするなどして、感染を防ぐ対策をとることも重要」と話す。【元村有希子、江口一、河内敏康】
◇卵、前日まで出荷
約1週間で約1万羽のニワトリの大量死。発覚も匿名の通報からで、この養鶏場が出先となっている「浅田農産」(兵庫県姫路市)は「27日朝に京都府に届けるつもりだった」というが、卵も26日まで出荷を続け、その対応が適切だったか議論となりそうだ。
同社によると、この養鶏場では毎日100羽単位で死ぬが、20日以降の数の多さを不審に思い、22日、社長と常務が現地に赴いて死んだ10羽前後を解剖。いずれも内臓などはきれいで水、えさなどによる腸炎と判断した。大量死は収まらず、25、26両日に兵庫県内の鶏処分場の獣医にみてもらい、同様の判断を得ていたが、26日に卵の出荷を止めるとともに届け出ることを決めていたという。卵の出荷量は、この養鶏場で1日8トン(約12万個相当)にのぼる。
同社は従業員約230人。兵庫、岡山、京都の3府県に計6カ所の養鶏場を経営、約175万羽を飼育している。
同社によると、山口県の鳥インフルエンザ発生以降、鶏舎そのものや鶏舎に入る車両の消毒を実施。鶏舎は、周囲を鉄板で囲んでおり、外から野鳥などは入れない構造になっているという。また、えさは自家製でなく外部から仕入れている。
◇農相「対応遅れ、残念」
京都府丹波町の採卵鶏農場での鳥インフルエンザ発生が疑われる鶏の大量死で、鶏が死に始めてから府南丹家畜保健衛生所が通報を受けて立ち入り検査を実施するまで約1週間も経過していたことについて、亀井善之農相は27日の閣議後会見で「国の防疫マニュアルに定めた対応が遅れたことも考えられ、残念な結果だ」と述べ、全国の自治体や関係団体に対して、発生を早期に発見する体制の確立を改めて求める考えを示した。
府によると、発生農場で鶏が死に始めたのは20日ごろだが、26日夕に匿名の通報があって初めて判明。府南丹家畜保健所が立ち入り検査したのは27日未明だった。
ただ、早期通報を呼びかけるといっても、鳥インフルエンザ発生が確定した場合に半径30キロ以内に命じられる鶏、卵の移動制限による農家の経済的打撃をどう緩和するかなど、課題も残る。
現在のマニュアルには農家への補償が明記されておらず、「発生のつど状況を見て補償するか判断する」(同省衛生管理課)ため、経済的損失や周辺への影響を恐れた農家が情報を隠してしまう可能性もある。1月の山口県のケースでは卵の損失の半額を国が補償したが、こうした支援を恒久化するなどの措置が今後の焦点になりそうだ。
一方、ウイルスの確定診断については、同保健所でウイルス分離検査などを実施し、陽性反応が出れば、独立行政法人・動物衛生研究所(茨城県つくば市)に検体を送って確定診断する。府の検査に3〜4日かかるとみられるため、正式に鳥インフルエンザかどうか確定するには時間がかかる。【上田宏明】(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040227-00001012-mai-soci