悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。
また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。
「ひと言、松本被告が『私の責任だった』と言ってくれたら、息子もどんなに救われたか……」
首都圏に住む60代の母親は、松本被告の判決を迎えてそう話した。息子は東京拘置所の中にいる。地下鉄サリン事件の実行犯として死刑判決を受けた一人だ。一審の裁判長は「真摯(しんし)な反省」を認めた。
優秀な理系の学生だった。出家するとき、「自分のやりたい研究が自由にできる」と目を輝かせた。両親は思いとどまるよう説得したが、無駄だった。もっと早い段階で引き戻していれば、と悔やんだ。
オウムがマスコミで騒がれるようになると、母は「悪いことだけはしないで」と手紙を送り続けた。しかし、教団内の息子には届いていなかった。逮捕後に初めて警察署で会ったとき、息子はポロポロと涙を流して謝るばかりだった。
母親は毎朝、事件で亡くなった人の冥福と、負傷者の快復を祈り、息子の非をわびる。弁護士を通じて墓参りも申し出たが、遺族に許してもらえなかった。
息子の公判には一度も欠かさず通い、拘置所での接見も重ねた。「亡くなった人のことを思えば、会えるだけでもぜいたくかも知れない」
一方で「教祖」を信じ、青年期を拘置所で過ごすことになった息子が哀れでならない。
「あの子が本当にやったのか、いまだに信じられない気持ちもある」。加害者の親もまた苦しみ続けている。(02/27 15:52)