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2004年02月27日(金) 16時00分

「判決出ても変わらない」 地下鉄サリン事件遺族朝日新聞

 95年3月、営団地下鉄職員の菱沼恒夫さん(当時51)は、サリンの入った新聞包みを片づけ、乗客を誘導した後に亡くなった。

 地下鉄サリン事件に巻き込まれての夫の急死。妻の美智子さん(60)はストレスで寝られない日が続き、3年ほど病院に通った。

 松本被告の公判だけは夫に報告する義務があると考え、最初のうちは傍聴に通った。しかし、法廷で見た被告は居眠りしたり、意味不明な言葉を話したりするだけで、謝罪の言葉もない。

 「裁判なんかやる必要があるのだろうか。顔も見たくない」

 傍聴をやめた。

 01年5月に遺族として証言台に立った際には、「同じ苦しみが分かるように、サリンで一日も早く極刑にしてほしい」と言った。

 毎年3月20日には、霞ケ関駅に献花に訪れる。

 長男(30)は父と同じ営団地下鉄職員。霞ケ関駅を通る路線での勤務経験はない。「父は職員として当たり前の行為をした」と思う。

 事件さえなければ、菱沼さんは無事に定年を迎えていたはずだ。夫婦で田舎に戻り、好きな釣りをしながら、のんびりと過ごしていただろうと美智子さんは想像する。

 「判決は一つの区切りでしかない。判決が出ても、何も変わらない。当事者にとっては、事件はいつまでも風化しないんです」と話した。

(02/27 16:00)

http://www.asahi.com/national/update/0227/022.html