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95年3月、営団地下鉄職員の菱沼恒夫さん(当時51)は、サリンの入った新聞包みを片づけ、乗客を誘導した後に亡くなった。
地下鉄サリン事件に巻き込まれての夫の急死。妻の美智子さん(60)はストレスで寝られない日が続き、3年ほど病院に通った。
松本被告の公判だけは夫に報告する義務があると考え、最初のうちは傍聴に通った。しかし、法廷で見た被告は居眠りしたり、意味不明な言葉を話したりするだけで、謝罪の言葉もない。
「裁判なんかやる必要があるのだろうか。顔も見たくない」
傍聴をやめた。
01年5月に遺族として証言台に立った際には、「同じ苦しみが分かるように、サリンで一日も早く極刑にしてほしい」と言った。
毎年3月20日には、霞ケ関駅に献花に訪れる。
長男(30)は父と同じ営団地下鉄職員。霞ケ関駅を通る路線での勤務経験はない。「父は職員として当たり前の行為をした」と思う。
事件さえなければ、菱沼さんは無事に定年を迎えていたはずだ。夫婦で田舎に戻り、好きな釣りをしながら、のんびりと過ごしていただろうと美智子さんは想像する。
「判決は一つの区切りでしかない。判決が出ても、何も変わらない。当事者にとっては、事件はいつまでも風化しないんです」と話した。
(02/27 16:00)