2004年02月24日(火) 14時52分

＜武富士盗聴事件＞前会長、起訴事実認め、謝罪　東京地裁初公判（毎日新聞）

　消費者金融最大手「武富士」（東京都新宿区）の盗聴事件で、電気通信事業法違反（盗聴）に問われた前会長の武井保雄被告（７４）は２４日、東京地裁（青柳勤裁判長）の初公判で「間違いありません。世間の皆様に多大な迷惑をかけたことをおわびする」と起訴事実を全面的に認め、謝罪した。検察側は冒頭陳述で、前会長が会社に批判的なジャーナリストの背後関係を調べるため盗聴や尾行を部下に指示した経緯を詳述した。【渡辺暖、三木陽介】

　検察側は関係者の調書を朗読し、昨年１１月に武富士元専務＝起訴猶予＝が同法違反のほう助容疑で逮捕された後、前会長の妻が元専務の妻と弁護人に、前会長からの指示を口外しないよう計３００万円を渡したことを明らかにした。

　検察側冒頭陳述によると、前会長は武富士の取材をしていたジャーナリスト２人の背後に黒幕がいると疑い、元総務部課長の中川一博被告（４３）＝分離公判中＝に盗聴などを命じた。中川元課長は探偵を雇って００年１２月〜０１年２月、２人の事務所や自宅の電話を盗聴したり、ジャーナリストが飲食店で人と会う様子を写真に撮らせた。武井前会長は盗聴テープを聴いて目ぼしい成果がないことを確認すると「これ以上やってもしょうがねえだろう。もういいや」と打ち切りを指示した。

◇「手術の傷跡痛む。早く保釈を」

　「私自身の責任を痛感しております」。武井被告は、力のない声で全面的に謝罪した。昨年１２月の逮捕から２カ月半。ヤミ米販売から身を起こし、一代で「王国」と呼ばれた東証１部上場企業のトップに登りつめた「ワンマン」の面影はなかった。

　午前１０時、しわくちゃのグレーのスーツにノーネクタイ姿で、武井前会長が入廷した。水色のスリッパを履いて被告席に向かって小またで歩く。静まり返った法廷に、パタパタと足音が響いた。

　青柳勤裁判長から職業を尋ねられると「今は別にやってません」と、しわがれた声で答えた。法人代表者として左隣に立った清川昭社長が「倫理に反する行為を社内から一掃したい」とかつての上司を厳しく批判した。前会長は背中を丸めたまま立ち尽くした。

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　「手術の傷跡が痛む。早く保釈してほしい」。武井前会長は拘置所でこう訴えているという。昨年１２月２日に逮捕された後、持病が悪化。１２月１５日から約１カ月間、拘置が執行停止され、手術を受けた。城のような豪邸から一転し拘置所生活は、高齢で手術を受けた身には相当こたえているようだ。

　逮捕前の武井前会長は捜査の進展に心労が募り、周辺に「もう会長を辞めたい」と漏らしていたという。逮捕後、間もなく容疑を認め６日後には会長を引責辞任した。拘置所では、弁護団にしきりに面会に来るよう頼み、差し入れられた金融などの実用的な本を熱心に読んでいる。逆に弁護団を通じて、創業者を失った武富士から経営に関する相談が持ち込まれることもあるという。

　前会長の逮捕後、株価は約１カ月間低迷した。「盗聴された」「携帯電話の通話記録チェックなど行き過ぎた管理をされた」などと、元社員たちから相次いで民事訴訟も起こされた。批判的な記事を書いたジャーナリストや出版者を相手に高額な損害賠償訴訟を少なくとも６件起こしたが、今月になって１件の請求を放棄した。武富士は「提訴後、事情が変化した」と説明した。【木戸哲、渡辺暖】（毎日新聞）

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040224-00001047-mai-soci