悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年02月17日(火) 13時00分

社説1 首相は何のための郵政民営化かを語れ日経新聞

 経済財政諮問会議を舞台に、郵政民営化の検討作業が始まった。春には中間報告をまとめ、今秋までに結論を出すことになっている。郵政改革次第で国の形が決まる、構造改革の本丸と言っても過言ではない。

 小泉首相は昨年の自民党総裁選で郵政民営化を主張して圧勝、総選挙の公約にも掲げて過半数の支持を得た。公社化で幕引きとなりかけた議論を復活させたのも、郵政改革が持論の首相だった。しかし、中身について、首相は何も語っていない。

 そこから民営化論議は迷走する。首相の私的諮問機関、「郵政三事業の在り方について考える懇談会」が一昨年まとめた報告書は、三案(政府出資の特殊会社化、三事業継続の完全民営化、郵貯・簡保を廃止・縮小したネットワーク会社化)を併記しただけで結論を棚上げした。

 昨秋、竹中経済財政担当相が示した「五原則」は、経済活性化、構造改革との整合性に加え、国民の利便性、郵便局ネットワークの活用、雇用への配慮をうたっている。誰も乗り気ではない民営化論議の土俵に、政治と行政を乗せるための方便かもしれないが、やぶから棒の印象をぬぐえない。五原則のすべてを満たせば何も変えられないという意味で、現状維持の枠組みともいえる。

 郵便貯金は定額貯金の形で個人国債を大量に消化する仕組みであり、簡易保険と合わせた巨大さのみならず、財政・金融制度の根幹にかかわる問題である。金融事業は、財投改革の入り口であると同時に、国債管理政策と一対のものとして財政改革に連動し、民間市場とは別ルートの資金の流れを是正して整合的な金融システムを構築する金融改革のカギをも握っている。郵政改革が構造改革の本丸といわれるゆえんだ。

 一方、郵便事業は金融事業の利益補てんを受けなければ成り立たないほど事業基盤がぜい弱で、郵便局ネットワークを維持するには大胆な合理化が避けられない。これは30万人が働く組織の経営問題である。

 国の骨格にかかわる制度問題と国民の利便性を同じ次元では語れず、そこに生身の人間の雇用問題が加わる。目的と優先順位が示されないままスタートした郵政民営化論議は、道路公団と同じ「戦略なき改革」の轍(わだち)に踏み込みつつある。単なる郵政公社の経営改革に終わらせるのではなく、掲げるべき目標は国の設計を変える大改革だろう。

 何のための郵政民営化なのかを示せるのは小泉首相しかいない。首相は議論を政府と自民党に丸投げせずに、国家百年の計を語るべきだ。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20040217MS3M1700P17022004.html