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牛丼が街から消えていく。復活のめどは立っていない。牛丼店に当然あるべき牛丼が、今はない。
観念では分かっていても、現実感が伴わないことはよくある。食料自給率に関する議論も、その典型的な例である。
四年前に閣議決定された農政の指針「食料・農業・農村基本計画」には、二〇一〇年度の食料自給率を、カロリーベースで45%にする目標値が盛り込まれている。
しかし、実情はこの五年間連続で、40%の横ばいだ。目標は達成困難とされており、年明けに本格化した五年ごとの基本計画改定作業に当たっては、目標値の引き下げも取りざたされた。国民に約束した目標を、達成できそうにないからあっさり引き下げようというのでは、あまりにも情けない。
食料自給は大切な命の糧の核心に触れる問題なのに、国民の関心事とは言い難い。農家や農業団体が常にその議論の中心になり、特に都市部の住人は、絶え間なく押し寄せる豪華で安価な世界の食の洪水にどっぷり漬からされてきた。
ところが、一昨年から風向きが変わり始めた。大手食品メーカーの牛肉偽装事件を皮切りに、生協までも巻き込んださまざまな表示疑惑や中国野菜の残留農薬問題などが相次いだ。そして米BSE(牛海綿状脳症)問題で、牛丼店が看板を掛け替える事態に及び、消費者にもようやく食料自給率という言葉が実体を伴って迫り始めているようだ。
農水省が昨年末に実施した食料自給率目標に関する意識調査では、消費者の九割が食料供給に不安を持ち、85%が大幅に引き上げるべきだと感じていることが分かった。
見方を変えれば今は、食に関する議論を広く巻き起こし、国民の食の指針に消費者の意向を反映させる絶好のチャンスに違いない。
新しい基本計画にも、適正な目標値が明示されるべきである。
食の安心確保には、輸入頼みの食生活を見直すことも必要だ。全体の二割に及ぶ食べ残しの削減も、消費者の自覚なしにはなし難い。目標値は、具体的な行動を促すための動機づけにもなるはずだ。
消費者の声を最大限に取り入れながら目標を掲げ直し、内外産品の調和に基づく食生活の再構築を目指したい。関心は、やる気の源だから。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040214/col_____sha_____003.shtml