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2004年02月12日(木) 00時00分

■コラム■■逆ギレする前に(柴沼 均)毎日新聞

 日本語の物の数え方は不思議である。イカは「杯」、豆腐は「丁」、そしてウサギは「羽」。小学校の国語で習うはずなのだが、ある日、新聞記事でウサギが「1羽」と書いてあるのはおかしい、「1匹だ」と年配の男性から苦情の電話がかかってきた。

 とりあえず、「ウサギの数え方は“羽”ですよ」とお答えしたところ、いきなり「おれは生まれてからウサギは何匹と数えている。おまえはそれを間違っていると言うのか」といきなり逆切れされた。

 その通り、間違っているのだが、指摘する余裕も与えず、男性はさんざんわめいたあと、電話をガチャリと切った。些細なことで逆ギレする人がいることにあきれたが、そういう人は結構いるようである。

 JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)の人が、ある企業にウイルス感染を通知したところ、逆ギレされた経験があると話していた。ネット初心者の個人ユーザーならともかく、企業のサイト管理者にとってみれば、JPCERT/CCから連絡がくるというのは信頼性の高い通知といえるわけだが、それに逆ギレする神経が理解できない。カルシウムが足りないのだろう。

 ウサギの数え方を一生間違っていても、本人が間抜けなだけで他人には害を与えないが、企業がウイルス感染していたら、自社だけでなくネットワーク全体に迷惑を及ぼす。そういう考えを持たないところは、ネットを切断すべきだと個人的には思うが、強制力はだれも持っていない。

 コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の個人情報流出問題で京大研究員が逮捕された。関係者によると、彼はこれまでにも、あちこちの脆(ぜい)弱性を指摘してきたが、なかなか改善されないことに不満を持っていたそうである。また、実際に侵入した証拠を他の人に見せないと、なかなか信じてもらえないため、イベントで情報公開した、と指摘する人もいた。

 4人の個人情報がネットでさらされたのだから、彼はやったことの責任を問われなければならない。また、ACCSも個人情報流出の発覚後は、調査委員会を設置するなど、きちんと対応をしたと思う。

 でも、一方的に彼が悪いという風潮には違和感を覚える。これまで、脆弱性を指摘された側が逆ギレしたり、無視したりしたことはなかったのだろうか。彼は直接的な責任があるわけだが、間接的な責任がある人は他にいると思う。

[ACCSの個人情報流出で京大研究員を逮捕 警視庁]
http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200402/04/1.html

http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200402/12/8.html