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指定暴力団山口組旧五菱会(ごりょうかい)系のヤミ金融グループによるマネー・ロンダリング(資金洗浄)事件で、同グループの違法収益のうち少なくとも約60億円が、日本の都市銀行に開設されている外国銀行名義の口座を使って海外送金されていたことが5日、警視庁の調べでわかった。
この方法だと送金者の個人名が表に出ないため、金融・国税当局もチェックできなかった。不正送金の監視体制の盲点を突いた新たな手口が判明したことを受け、警視庁は、マネー・ロンダリングの捜査では初めて捜査員を海外に派遣し、全容解明を目指す。
これまでの調べによると、旧五菱会系のヤミ金融グループ幹部ら2人が昨年2月から6月にかけて、違法な収益で購入した無記名の割引金融債を、証券代行会社「日本証券代行」(東京)に持ち込んだ。換金された資金は、英スタンダード・チャータード銀行東京支店を経由し、国際的金融機関クレディ・スイスの現地法人「クレディ・スイス香港」に送金された後、さらに「クレディ・スイスシンガポール」に移されていた。
警視庁で、この取引を詳しく調べたところ、同グループ幹部らが日本証券代行に割引債を持ち込む直前、スタンダード銀行側が同社に「割引債の換金を依頼したい」と連絡していたことが判明。幹部らは、スタンダード銀行の代理人として訪れていたことも分かった。
このため、同社はスタンダード銀行名義で割引債を換金し、同行が日本の都市銀行支店に開設している口座に振り込んでいた。
スタンダード銀行はその後、クレディ・スイス香港の口座に資金を送金したが、スタンダード銀行側は、警視庁の調べに「換金も送金も、クレディ・スイス香港からの依頼だった」と説明。読売新聞社の取材に対し、「ヤミ金融業者と取引があるわけではない」としている。
クレディ・スイス香港は、日本での業務をスタンダード銀行に委託しており、多額の預金者に対し、割引債の換金などを含むサービスを行っている。警視庁では、ヤミ金融グループがこのサービスなどを悪用し、個人名義を一切表に出すことなく海外送金を繰り返していたとみて香港やスイスに捜査員を派遣する。
送金は、判明分だけで少なくとも10回、計約60億円に上っている。警視庁は、同グループ最高幹部梶山進被告(54)がスイス国内のクレディ・スイスの口座に預金していた約51億円との関係も捜査を進める。
日本から3000万円を超えて海外に送金する場合、外為法で財務省、日銀への報告が義務付けられているが、今回のケースは、「非居住者」の外国銀行が送金者のため、同法に抵触しない。
日本証券代行の話「受託先の指示に基づき、(割引債の)受け渡し、保管業務を行っており、取引内容までは把握していない」
スタンダード・チャータード銀行東京支店の話「取引先の金融機関の指示に従って取引を行った。それ以上のコメントはできない」
クレディ・スイスの話「具体的な取引内容については、コメントできない」