悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年02月05日(木) 00時00分

1000誌扱う“ネット書店” 不況の雑誌界に風穴 東京新聞

 雑誌の定期購読率は米国で80%、日本では10%にすぎないという。それに着目した「富士山マガジンサービス」(東京都渋谷区)が、日本でインターネットで定期購読申し込みのビジネスを始めて一年余。今では月間百万人が同社の専門サイトを訪れているという。いわば本がアマゾンなら、雑誌は富士山というわけだ。長い不況から抜け出せない出版界に風穴はあいたか?

 「『アイデアを出すのは易しい。でも、それを実行するのはとても難しい』。ジェフ・ベゾスからは、よくそんな言葉を聞きましたよ」

 富士山マガジンの西野伸一郎社長(39)は、そう振り返る。ベゾス氏とは、米国のインターネット書店「アマゾン・コム」の最高経営責任者(CEO)。世界のビジネス界で知らない人はないほどだ。実は西野さんは、アマゾンの日本法人を設立した一人なのである。

 「ええ、ファウンダー(創立者)です。一九九九年にNTTを辞めて、ベゾスのもとに行きました。アマゾンの日本開業は二〇〇〇年ですが、〇二年九月まで籍を置きました」

 書籍の世界では、この三年余の間にオンライン注文はすっかり定着した。ところが、雑誌の方は相変わらず既存の流通網にしばられたままだった。

 「出版社から取次会社、そこから全国の書店にという方法は、これまでは非常に優れた仕組みだったと思います。安くタイムリーに全国津々浦々まで雑誌を届けられたわけですから…」

 出版科学研究所(新宿区)によれば、雑誌の年間販売額(推定値)は書籍の一・四倍にあたる約一兆三千六百億円。ところが、これが一九九七年(約一兆五千六百億円)をピークに減り続けている(グラフ参照)。しかも、返品率は約30%にのぼる。

 一方、書店では返品率を下げるため、売れ筋の雑誌ばかりを並べる傾向にあって、読みたい雑誌が書店で手に入りにくいこともある。

 「現代は個人の趣味が多様化している時代です。いろんな趣味があり、いろんな人がそれを楽しんでいる。つまり、雑誌をマスに向かって流す従来の仕組みが、制度疲労を起こしているのです」

 そこで、西野さんは富士山マガジンを設立して、二〇〇二年十二月からサービスを開始した。読者は同社のサイトから、定期購読したい雑誌を選んで申し込む。あとは同社を経由して出版社から雑誌が読者の元に届けられる。

 「ええ、今では約三百五十の出版社が出す約一千誌を取り扱っています。サイトを訪れる人も月間百万人を超えました。業績は非公開ですが順調です」

 出版社側にもメリットが大きい。定期購読の読者を多く獲得することは、返品率の抑制につながるからだ。

 「基本的には定価の35%がうちのマージンです。月間ランキングでトップクラスの雑誌では、二百から三百ぐらいの購読数があります。定期購読だと割引する雑誌も多い。割引率は千差万別ですが…」と西野さん。

 ちなみに富士山マガジンでの本年度のベストセラー雑誌は、(1)「和樂」(小学館)(2)「TIME」(タイム・インク)(3)「ハッピー*トリマー」(緑書房)…。その他、上位には英語雑誌や英会話学習の雑誌が並ぶ。

 「『和樂』は女性向けの雑誌で、『ハッピー*トリマー』は、犬の毛を刈るトリマーたちの専門誌です。購読者はプロばかりでなく、犬のおしゃれを見たい人もいるのでしょう。一般書店で見かけることの少ない、こういった雑誌が第三位になるのは、まさにオンライン注文ならではでしょうね」

 オフィス用品通販「アスクル」や取次会社「大阪屋」などとの業務提携も進んでいる。不況下の出版界に一石を投じたのは間違いないし、富士山のすそ野も次第に広がっているようだ。果たして、アマゾンのような大河となれるかどうか。

 同社のホームページ(HP)は、http://www.fujisan.co.jp

 文・桐山桂一

 ◆誌面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20040205/mng_____thatu___000.shtml