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2004年02月05日(木) 09時24分

商品情報入手は消費者の「権利」と明記 自民が法改正案朝日新聞

 牛肉の表示偽装問題などをきっかけに消費者政策の見直しを検討していた自民党のプロジェクトチーム(座長・岸田文雄衆院議員)は、消費者保護基本法を改正する方針を決め、骨格を固めた。消費者が安全な商品・サービスや必要な情報を得ることなどを「権利」として新たに明記する一方、事業者には必要な情報をわかりやすく提供する責務を課す。

 同法は「消費者の憲法」といわれ、68年の制定以来、初めての抜本改正。これまでの消費者の「保護」から、権利に支えられた「自立」を支援する政策へ大きく転換する。名称は「消費者基本法」に改め、野党にも呼びかけて今国会に議員提出し、成立を目指す。

 改正案では、消費者被害が生じた場合の適切かつ迅速な救済▽適正な価格で合理的に商品・サービスを選べる機会の確保▽消費者政策への意見の反映——も盛り込む。

 例えば、専門的な知識のないお年寄りが投資リスクの高い金融商品を購入する場合、言葉巧みに勧められ被害が起こっている。こうしたケースを念頭に、消費者は十分な商品情報を得られ、適切な判断ができるようにする。事業者には、購入者の知識や経験、財産の状況に配慮するよう求める原則を定めた。

 さらに、消費者の被害やトラブルが発生した時の救済策として、消費者団体は消費者と事業者との間に立って、解決を支援する。政府は、消費者団体が直接の被害者でなくても、消費者全体の利益のために企業を訴えられる団体訴訟制度の導入を検討しており、その流れを促進することになる。

 自動車などに適用されているリコール制度を拡充。対象を広げることも検討する。虚偽や誇大な広告に対し、表示違反と同様に規制することも明示した。

 消費者が身近に接する相談窓口については、現行法では市町村が苦情処理を担うと定められているため、都道府県レベルでは担当職員の削減などが続いている。このため、苦情処理は都道府県も担うことに変更する。

 インターネット取引など新たな分野の被害も広がっており、法改正で将来的にも対応できる消費者問題の基本的な枠組みができることになる。しかし改正内容に沿って関連法制を整備する段階になると、消費者の権利拡大に警戒感を抱く事業者との間で、どう調整していくかが課題になる。

 〈消費者保護基本法〉 50〜60年代に、森永ヒ素ミルク中毒事件など消費者の安全を脅かす事件が多発したことをきっかけに制定。米国ではすでに定められていた「消費者の権利」は盛り込まれなかった。ここ数年、牛肉偽装事件、三菱自動車のリコール隠しなど企業の不祥事が相次いだことを受け、内閣府の国民生活審議会が政策の見直しに着手。昨年5月にまとめた最終報告で、基本法の改正や公益通報者保護制度の創設などを提言した。内部告発者保護は別の法律で制定を目指し、基本法は議員立法だった経緯から、自民党などが改正内容を検討していた。

〈消費者保護基本法改正案の骨子〉

●安全確保や被害の適切、迅速な救済を受けられる「消費者の権利」を明記

●自主的な行動基準を作り、消費者の信頼確保に努めることを「事業者の責務」とする

●契約時、事業者が消費者に詳しい情報を提供、公正な契約を結べるよう、現行法にない「契約の適正化」を基本的施策とする

●学校・地域などで啓発活動や「消費生活に関する教育」を充実

●閣僚による消費者保護会議を「消費者政策会議」に改称。大綱をつくる(02/05 08:57)

http://www.asahi.com/national/update/0205/008.html