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「この薬はかなり強い作用があります。量を間違えないで」−。名古屋市緑区の住宅街にある薬局。薬剤師の清水裕世さんは、糖尿病などがある六十代男性に服薬指導をしていた。この日は三枚の処方せんで計九種類の薬を出した。朝昼晩でのむ薬が違うため、間違えないよう別々の袋に仕分けし直した。
男性は痛みなどで良く眠れないため「睡眠薬を多めにのんでいる」という。清水さんは「効きが悪いなら医師に相談して別の薬に変えてもらってください」と指示通りにのむよう注意した。
「一般の人が基礎的な知識を持ってからなら規制緩和も良いと思うんですが…」と清水さんはため息交じりに話す。高齢者には、慢性的な病気を抱えて、毎日、多くの種類の薬をのむ人が少なくない。大衆薬を安易に服用すると、のみ合わせの危険性も高まる。
薬事法は、医薬品の販売には薬剤師の指導が必要と定めており、薬局や一般販売業の許可を受けた薬店は薬剤師がいないと、医薬品を売れない。
政府の総合規制改革会議は昨年二月、風邪薬や解熱剤の一般小売店での販売解禁を重点検討事項として打ち出した。急増するドラッグストアなど医薬品販売の現場では、消費者が自由に選んで買っているのが実態で、薬剤師がいなくても変わらない。深夜営業のコンビニで薬を買えれば、消費者の利便性が高まり経済効果も見込める−というのが同会議の主張だ。
コンビニなどが加盟する日本フランチャイズチェーン協会の昨秋の調査では、消費者の78%が「コンビニで大衆薬が買えるようになると良い」と答えた。急に具合が悪くなった時に解熱鎮痛剤や胃腸薬、風邪薬などを買いたいとするニーズが高い。同協会常任理事の三木敏夫さんは「コンビニの品質管理はしっかりしており、安全上も問題がない。薬剤師に相談できる体制づくりもできる。消費者の要望にこたえるためにも、風邪薬などを扱えるようにすべきだ」と訴える。
「利便性、経済性の追求が薬害を生んできたのではないか」。昨年十月中旬、東京で開いた薬害根絶フォーラムの参加者らは、規制緩和に反対の声を上げた。
サリドマイド、スモンなどの薬害事件は大衆薬が原因だ。最近では、鼻炎薬などに含まれる成分の副作用で脳出血が起きたり、風邪薬で間質性肺炎が発症したりした薬害が起きている。また、風邪薬は全身がただれた状態になるスティーブンス・ジョンソン症候群や、呼吸困難などが起こるアナフィラキシー・ショックなど重い副作用が出ることがある。
これらが薬剤師の関与で防げたかどうかは不明だが、日本薬剤師会専務理事の石井甲一さんは、「薬は本来、なるべくのまないようにするもの。専門家の目から見たら安全上問題のない医薬品などはない」と話す。
日本薬剤師会は▽適切な説明、服薬指導をする▽名札を着用し、責任の所在を明確にする−ことなどを会員に徹底し、患者の安全確保に力を入れているという。厚労省も薬剤師の資質向上のため薬学部の教育課程を二年延長して六年とすることを検討している。
市場経済の中では、安全より利便が優先されがちだ。薬剤師が、私たちの安全をどう守っているのか。それを分かりやすく、目に見えるようにする必要がある。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040205/ftu_____kur_____000.shtml