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[おれおれ詐欺]「高齢者を狙う卑劣な犯罪だ」
これも、最近の世相を象徴する犯罪である。「おれだよ、おれ」と子供や孫を装って電話をかけ、高齢者などから多額の現金をだまし取る新手の詐欺事件が急増している。
警察庁によると、昨年一年間で未遂も含め六千五百件発生し、被害総額は四十三億円にも上った。
「交通事故を起こした。相手の車の修理代が必要」と言われるまま、指定の銀行口座に五百万円を振り込んだ老女もいる。息子役や事故の相手役、警察官役が次々と電話に出て、架空の示談金の名目で現金を振り込ませるという、念の入った手口もある。
被害者の八割は六十歳以上の人だ。冷静に対応すれば、電話の声で分かるはずだ、と思われがちだ。しかし、詐欺師特有の巧みな演技で肉親の情に訴えられると、気も動転してしまうのだろう。
最近は、「金を振り込めば娘を返してやる」「息子が金を返さない。払わないと指を詰める」などと、誘拐・監禁を装った恐喝事件も目立ってきた。
名簿や電話帳を見て、高齢者らしい名前に手当たり次第にかけている場合もある。ヤミ金融業者らが、警察の摘発体制が強化されたことから、狙いを多重債務者から高齢者に移して犯行に及んだケースや、電話をかける役、口座を開く役と役割分担していたグループもある。
強盗事件でも、高齢者の被害が急増している。背景として、高齢者世帯の増加や、金融資産を保有している高齢者が比較的多いことが指摘されているが、治安上も憂慮すべき事態だ。
不審な電話を受けた時には、まず警察や親族、知人に相談することだ。金融機関も、多額の引き出しや送金をしようとする高齢者には、十分注意するように声をかけることを、職員に徹底したい。
警察が摘発した「おれおれ詐欺」は百七十九件だけだ。犯人は姿を見せず書類も残さない。特に、不正に開設された銀行口座とプリペイド式の携帯電話が、犯人の特定を難しくしている。
どちらも、インターネット上で公然と売買されている。口座を偽造書類を使って開いたり、第三者に開かせて買い取る者もいる。電話会社による購入者の本人確認が不徹底だとの批判もある。口座や携帯電話の悪用は、ヤミ金融や恐喝事件など最近の犯罪に共通する特徴だ。
犯罪者に付け入るスキを与えているものをチェックし、防止策を講じていく必要がある。口座や携帯電話の転売規制も検討すべきだ。企業にも、犯罪対策への十分な配慮が求められる。それは社会的な責任でもあるだろう。