2004年01月30日(金) 01時26分
<司法制度改革>裁判員制度で法律原案 09年めどに実施(毎日新聞)
政府の司法制度改革推進本部(本部長・小泉純一郎首相)は29日、国民が裁判官と一緒に重大な刑事裁判を行う裁判員制度の法律原案(骨格案)を公表した。選挙人名簿から無作為で選ばれた20歳以上の国民が裁判官と対等の権限で、被告の有罪・無罪や刑期を決める。参加は義務だが、仕事や育児など一定の条件で辞退できる。裁判内容について公務員並みの守秘義務を永遠に負い、違反者は懲役刑も受ける。政府は今通常国会で法案成立を図るが、辞退の条件や罰則の是非などが審議の焦点になるとみられる。
法案が成立した場合、5年ほどとされる周知期間を経て、09年をめどに実施されるとみられる。
原案によると、裁判員は事件ごとに選ばれ、合議は原則として裁判官3人、裁判員6人で行われる。被告が起訴事実を認め、検察、被告・弁護側双方が了承した場合、裁判所は裁判官1人、裁判員4人で裁判を行える。対象は1審の裁判に限る。
裁判員に選ばれても、裁判所からの呼び出しに応じなかったり、選任手続きの質問にうそをついたりすると、罰金・過料を科せられる。裁判に参加した場合は評議の経過や各裁判官・裁判員の意見、評決の数などについて無期限の守秘義務を負う。違反すると程度によって懲役刑や罰金刑を受ける。また、裁判員になった場合、日当と交通費、宿泊費は支払われるが、特別な手当はない。
推進本部の裁判員制度・刑事検討会の井上正仁座長による試案(昨年10月)は裁判員の対象を25歳以上としていたが、原案は20歳以上に引き下げた。推進本部の当初案(昨年3月)に盛り込まれていた報道機関に対する偏見報道禁止の規定などは削除した。
政府は、刑事裁判に公判開始前の準備手続き制度を導入したうえ、連日開廷し、ほとんどの裁判で裁判員の拘束期間を1週間程度に抑える方針。企業には、裁判員に選ばれた社員に休業を認める義務を課す。
今後の国会審議では、辞退や罰則の問題以外にも▽守秘義務の範囲をどう明確化するか▽裁判終了後に話せる内容をどこまで認めるか——などが論点として予想される。【伊藤正志】
◆裁判員制度の骨子◆
・裁判官3人と裁判員6人で構成する。被告が起訴事実を認め、当事者に異議がない場合、裁判官1人と裁判員4人も可能
・対象事件は、死刑や無期の懲役・禁固に当たる罪と、懲役1年以上の事件で故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪(年間計2750件)
・裁判員の対象は、選挙権のある20歳以上
・裁判員は病気や介護、育児、仕事など一定の理由で辞退できる
・裁判員は評議について守秘義務を負い、違反すれば懲役・罰金刑
【ことば】裁判員制度 政府が進める司法改革の目玉とされる刑事裁判改革。ドイツやフランスで実施されている参審制度と同じように、市民が裁判官と一緒に被告を裁く。司法制度改革推進本部の概算では、裁判員を6人、補充裁判員を3人とした場合、合わせて年間約2万4700人が選任され、選任手続きのため呼び出される者は約12万3700人に上る。(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040130-00000119-mai-pol