2004年01月28日(水) 14時19分
社説2 裁判員実現へ国民の理解促せ(日経新聞)
国民が刑事裁判の審理に参加する裁判員制度の内容について、自民・公明両党が合意した。これで制度の導入に必要な法案を国会に提出するメドが立った。裁判員に伴う国民の負担を懸念する意見もあるが、適正な裁判の実現と民主主義の進展に不可欠であることを訴えれば国民の理解は得られるはずだ。国民の参加しやすい制度にするため議論を尽くし法律を早く成立させてほしい。
焦点となっていた裁判官と裁判員の人数について、両党の合意では裁判官3人・裁判員6人を原則とするが、被告が起訴事実を認め双方に異議がない場合裁判官1人・裁判員4人でも審理ができることになった。
国民の多様な価値観を反映させるため裁判員を6人としたのは当然であろう。裁判官3人では影響力が強くなりすぎるおそれもある。だが、判断の安定性や国民に与える安心感からやむをえない結論といえる。
裁判官1人・裁判員4人への選択を認めたこともうなずける。司法制度改革審議会意見書は裁判員を飾り物に終わらせないこと、実りある検討ができることを強調している。その趣旨から考えると有益な選択肢と評価できよう。
小泉純一郎首相は、施政方針演説で裁判員制度の導入を約束した。民主党も、導入に賛成している。政党レベルでは、裁判員制度推進派が多数を占めるように見える。だが、裁判員制度が現実のものになるにつれ国民の負担を指摘して導入に及び腰の意見が出てきた。
裁判員制度は、仕事や家事に追われる国民に刑事裁判への参加を義務として課すものである。裁判の対象は、死刑や無期懲役などに当たる重大事件である。裁判員になる国民の経済的、社会的、心理的な負担は極めて大きい。だからこそ、この制度を定着させるには、国民の理解と協力が欠かせない。
国民の負担を少しでも軽減するため、分かりやすく時間のかからない刑事裁判の実現、裁判員休業制度の導入、公正・柔軟な辞退制度の採用などが必要になろう。国民の疑問や不安にこたえる十分な議論を国会で尽くしてほしい。国民もその議論に関心を持ち、納得した上で応分の責任を引き受けよう。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20040128MS3M2800928012004.html