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今回の卵偽装表示の余波ではない。最近、同世代やさらに若い消費者から頻繁に聞かれるようになったのだ。「卵の一番おいしい食べ方は、生たまごのかけごはんだと思っています。生で食べるのは日本だけ。このままでは日本の食文化の一つが消えてしまう…」
生ものの卵のパックには必ず「賞味期限」が記されているが、それは「生で食べられる期限」という意味だ。ラベルの説明書きにあるように、期限が過ぎた後でも十分に加熱すれば食べられるが、期限の日付は気にしながらも、そこまで読んでいる消費者は意外と少ない。さらに「冷蔵庫(一〇度以下)で保存」という注意書きもある。
これらの表示を義務づけているのが食品衛生法。卵が対象になったのは一九九九年と、まだ日は浅い。「九〇年代に入って、食中毒の原因になるサルモネラ菌を卵白に含んだ卵が日本でも見られるようになり、卵が原因の食中毒も増えたんです。その対策として生食の期限が設けられました」(東京都食品監視課)
こうしたサルモネラ保菌卵の登場は卵巣に菌を持った鶏の出現が原因だが、菌を持つ卵の発生率は一万個に二−三個(0・03%)。それも菌の数は産卵直後は数個で、そのまま食べても問題はない。日数の経過と保存温度の上昇によって菌が百万個程度まで増殖して初めて、食中毒の危険が生じるという。
「食中毒は卵自体が悪いのではなく、殻を割り置きしたり、加熱不十分な卵料理を食卓に放置するなど、取り扱いに問題があって起きることがほとんどです」(同)
菌は七〇度で一分程度加熱すれば完全に死滅するが、スクランブルエッグや親子丼など、卵には“半生状態”の料理が多いことが食中毒を起こす頻度を高くしている。
一方「殻付きの卵は生き物。もともと生体の防御機能を持っているので、普通の生鮮食品より保存が効くんです」(同)。賞味期限の根拠である英国学者の研究でも、一〇度で保存すれば産卵後五十七日まで生で食べられるという=表参照。
売り場に毎日、新しい卵が届けられる日本では、常温流通が一般的だが、それでも夏場の賞味期限は理論上十六日ある。冷蔵流通は家庭まで温度を保てないと、殻表面に露が生じ、逆に卵内に細菌の侵入を招く恐れもある。現在、賞味期限は年間を通して十四日に設定されているのが通常で「安全圏中の安全圏」(愛鶏園の斎藤さん)というが、生産者側に偽装表示されたとき、消費者に自衛策はないのだろうか。
かつて新鮮な卵は表面がざらざらといわれたが、出荷前にブラシで洗浄されている今の卵にこの見分け方は通用しない。「割ってみて、濃厚卵白の状態を見てください」とアドバイスするのは、ホームページ「たまご博物館」主宰者の高木伸一さん(45)。
濃厚卵白とは、黄身を取り囲む粘りのある白身部分。「濃厚卵白は劣化とともに低くなる。その輪郭が確認できなければ食べない方がいい。加熱しても口当たりが悪く、おいしくないでしょう」
だが、新しい卵がすべてに勝るというわけでもない。「米国に『ゆで卵は十日たってから作れ』ということわざがある。新しい卵は卵白から二酸化炭素が抜けきっていないのでパサパサで、殻もきれいにむけないからです」。高木さんはゆで卵を作るとき、あえて古い卵を選んで買っている。
(矢島 智子)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20040125/ftu_____kur_____000.shtml