2004年01月24日(土) 15時16分
社説1 ビッグバン目指す商品先物市場改革を(日経新聞)
商品先物市場を巡る環境が様変わりしている。規制緩和の進展で、企業が価格変動リスクのヘッジ(保険つなぎ)手段を必要としているからだ。今国会で予定される商品取引法改正を機に、市場参加者の変化を通じて市場の構造改革を促す「商品版・ビッグバン」を実現すべきだ。
その矢先に起きた商品取引大手、東京ゼネラルの商取法違反事件に商品先物市場が抱える問題が集約されている。同社は取引に必要な証拠金など顧客資産の分離保管義務に反して虚偽報告を重ね、監督当局から取引受託許可を取り消され、東京工業品取引所で決済不履行に陥った。許可取り消しの行政処分は30年ぶりという前近代的な事件で、個人中心の顧客は損失を免れそうにない。
産業構造審議会は昨年暮れ、投資家保護の拡充と市場参加者の拡大・適正化を両輪とする制度改革案をまとめた。証拠金の取引所への全額預託と分離保管義務違反への罰則導入などで顧客債権の確実な弁済を担保し、取引所の会員や取引の資格をユーザー業界の実需家や金融機関に拡大する。市場の信頼性を向上させ、個人中心の投機的市場から実需家と機関投資家中心の産業インフラとしての市場へ転換を目指すものだ。
商品先物市場は統制経済には無用の長物でも、自由経済には不可欠な道具である。過去5年、日本の市場は右肩上がりの拡大を続けたが、その原動力がゼロから全体のシェアの半分を占めるに至った石油の上場だったことがそれを証明している。石油製品の輸入自由化、元売り会社の価格支配力の後退で、石油関連産業が公正な価格指標とリスクヘッジの場を切実に求めるようになった。
段階的に始まった手数料自由化は今年中に完了する。約100社ある商品取引会社の多くは専業で、収益の大半を手数料に依存している。電話勧誘や戸別訪問などトラブルが絶えない営業手法、ぜい弱な財務基盤など経営体質の改善が急務で、業界の再編・淘汰(とうた)は避けられまい。思惑通り、証券会社や外資などの金融機関が参入し、実需関連企業や資金運用の場を求める機関投資家の利用が本格化すれば、国民経済にとって盲腸のような存在だった商品先物市場は激変する可能性がある。
成長著しいアジアの経済力を背景に、日本の商品先物市場が価格発信機能を発揮すれば、原油などの割高な国際商品価格の解消にも役立つ。中国などのキャッチアップを考えれば、最後のチャンスともいえるこの機を生かして、健全で有用な商品先物市場への脱皮を図るべき時だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20040124MS3M2400Z24012004.html