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[米国産牛肉]「輸入再開に譲れぬ安全の確保」
あくまで安全が最優先だ。値上がりや品不足に浮足立ってはなるまい。
米国でBSE(牛海綿状脳症=狂牛病)の発生が公表されて一か月が経過した。
日本は公表後、直ちに米国産牛肉の輸入を禁止した。米国では、日本が取り組んでいるような全頭検査が実施されておらず、汚染された牛肉が日本に入り込む恐れがある。妥当な措置だ。
これに対し米国側は、発症したのはカナダから輸入された牛であり、米国内の検査は適正だとして、日本に輸入禁止の解除を求めている。米国農務省と日本側の関係省庁の担当者らが、二十三日から東京で協議に入る予定だ。
米国産牛肉は、日本国内の消費量の約三割を占める。その供給がストップしたため、国内では牛どんチェーンがメニューの変更を迫られたり、価格が上昇するなど、一部に影響が出ている。
だが、ことは人の口に入る食品の問題だ。日本と同じ水準で安全の確認が出来ていない以上、米国の要求に応じることは無理だ。より厳しい検査の実施を、米国に求めるべきである。
日本は、二〇〇一年九月にBSEが発生した一か月後に、全頭検査に踏み切った。肉骨粉の禁止で後手に回った不手際を反省し、世界でも異例の厳しい措置をとった。これにより、消費者の信頼が回復し、二歳未満の若い牛の感染を確認するなど、成果もあがっている。
一方、米国では歩行が困難になった牛など、ごく一部しか検査していない。年間検査頭数は約二万頭で、今後四万頭まで増やす方針を明らかにしたが、総処理頭数の三千五百万頭に比べれば、ほんのわずかだ。
日本政府が米国などで実施した調査の結果、不信感はさらに強まった。
発症した牛はカナダ産で、危険が指摘されていた肉骨粉を飼料にしていた。この牛は、ほかの八十頭と一緒に米国に輸出されたが、うち約六十頭の所在が確認できないままだ。BSEに感染している牛が、米国内にまだいる可能性があるということだ。
米国は、処理頭数が膨大で費用もかさむことを理由に、全頭検査に難色を示している。だが、日本に輸出する分の検査の徹底は、可能なはずだ。
安全を確認した牧場や処理場を指定して、そこからの輸出に限って日本が受け入れるという方法もある。
日本以外の国や、米国内の消費者団体などからも、検査強化を求める声が高まっている。最大の牛肉生産国として米国は、これらの声に応える責任がある。