悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2004年01月17日(土) 00時00分

イラク派遣 きしむ創価学会 有志が『蜂起』反対署名 東京新聞

 イラクへの自衛隊派遣をめぐり、連立与党の一翼を担う公明党の支持母体、創価学会の会員有志が反対を表明し署名活動を展開している。選挙戦では自民党もその組織票に大きく依存する団体の内部から出た活動に、学会幹部や公明党本部も困惑気味だ。先遣隊も16日出発し、派遣も本格化する中、鉄の団結から飛び出した学会員の胸中は−。 (蒲 敏哉)

 ■『公明は池田先生の思想に逆行』

 「今の公明党の方向は学会の唱える生命尊厳の法に百八十度逆行している。私たちの署名活動は組織として活動する苦しみの中から生まれたのです」。首都圏に住む「イラク派兵に反対し平和憲法を守る会」代表の会社員伊藤吉彦さん(43)は打ち明ける。

 伊藤さんは一九八七年、空手道場の先輩の誘いで入信した。「医療NGO『国境なき医師団』に支援の寄付をするなど平和問題に関心があった。学会の憲法九条を大切にする信条に共鳴した」のが理由だ。

 学会の地域幹部も務める伊藤さんは、イラク戦争前から、自民党と歩調を合わせる公明党の姿勢を危ぐしていた。同じ学会内の仲間とメールや電話で議論を重ねてきたという。

 「昨年三月の学会の記念日に、公明党が反戦声明を出すよう国会議員や党本部あてにメールやファクスを送ったが、まったく反応がない状態。そこでイラク復興支援特別措置法による自衛隊派遣に反対するため会員有志で会を立ち上げたのです」と経緯を説明する。

 有志は北海道から鹿児島県までの十人。伊藤さんは「学会内に新たな組織をつくったわけではない。相互に思想、信条で結ばれた同士の運動体です。今まで、学会の中でこうした運動はなかったが、池田大作名誉会長の思想とあまりにも正反対の行動を党が取っていることによる民衆蜂起で、学会員を名乗るからこそ、党に大きな影響を与えることができる」と強調する。

 昨年十二月、学会員百五十八人の署名を集め公明党本部に提出した。現在はインターネット「自衛隊イラク派兵反対署名のページ」のなかで、広く一般に署名を呼び掛けている。

 公明党の神崎武法代表は十二月下旬、派遣予定地のイラク・サマワを急きょ訪問。現地視察し「治安は比較的安定している」とアピールした。

 こうした動きに対して伊藤さんは「現地には三時間半しか滞在しておらず、かえってそれだけの時間しか安全が確保できない証拠では」と指摘、こう訴える。

 ■自衛隊家族会員も署名

 「以前なら反対すべきイラク特措法に賛成するなど、野党時代の是々非々の姿勢が、連立与党になることで身動きがとれなくなっている。私たちは批判しているのではない。党に対し、平和を愛する学会員に謝罪し、自衛隊派遣を見直す誠実な対応をお願いしているだけなんです。署名者には、自衛隊の家族の学会員の方もいる」

 国内や学会の米国支部などからの署名が千人を超えており、二十一日に党本部に提出する予定という。

 ■党や学会幹部身動きとれず

 こうした学会員の声を、創価学会本部はどう受けとめているのか。

 ある幹部は「学会員数は国内で八百二十一万世帯、海外では百五十万人。これだけの方がいれば、さまざまな意見があって当然。そういった中、個人の信念で活動されるのは自由。事前に報告も受けている」としながら、学会としてのイラクへの自衛隊派遣問題への姿勢について「先遣隊は決まったが、本隊の派遣までは決定していない。学会としての統一見解も現段階では決まっていないんです」と説明し、こう続ける。

 「世論調査でも七割の人が派遣を心配しているんですから、学会内でも同様の割合でそういう意見はあるでしょう。ずるずると米国の戦略に組み入れられて一線を踏み越えるのではないかと。ほとんどが成り行きを見守っている状態じゃないでしょうか」

 ■『自民の歯止め役』を強調

 伊藤さんらが非難する自公連立に対しては、「それまで競合していたのだから不満の声が多かったのは確か。しかし、日本経済が低迷する中での政権安定や、党としての政策を実現することができた。今回の派遣問題も神崎代表が現場主義で現地入りした評価は高く、自民党単独時代とは違った歯止めの役割を果たしている」と強調する。

 伊藤さんらは、池田名誉会長にも、趣旨に賛同しての署名を願っているが、この幹部は「名誉会長はインターネットをされませんから。署名なさっていませんよ」と明かす。

 さらに今夏予定される参院選で、今回の自衛隊イラク派遣問題が、学会内の投票行動に影響するかについては「現段階で何がどうと言える状況にはない。ただ公明党には、今後、自衛隊の本隊派遣が決まった際、人道支援と安全確保について、説明責任をきちんと果たしてもらわないといけない」と強い調子で語った。

 これに対し公明党の広報部は、伊藤さんらの活動について「要望書はお受けしました。党支持者の中にも、さまざまなお考えの方がいると思います。それだけに陸上自衛隊派遣については慎重を期しています」と説明する。

 同党の河上覃雄(のぶお)衆院議員は「これまで支持者に二千人余り会って直接説明してきたが、自衛隊が巻き込まれるのは心配だという声はあっても党の方針そのものに反対する方には会ったことはない。いろいろ意見がある中の一部では」との見方を示した上で「学会が平和を掲げていることへは配慮しなければならないが、国際貢献、日米同盟の観点も重視しなければ」と与党としての立場の難しさを強調する。

 別の党関係者は「確かに学会の中から、有志という形とはいえ、外部にアピールする形で署名活動が行われるのは極めて珍しいことだ」と驚きの声を上げながらこう反論する。「会の名前には、イラク派兵とあるが、派兵は戦争に行くことで、派遣とは大きく異なる。派兵であれば、当然私たちも反対だ。学会有志の方々には、その点で事実誤認があるのでは…」

 ■『マイナスに双方ならず』

 政治評論家の小林吉弥氏は創価学会の有志から連立与党への異論が出たことについて、こう分析する。

 「創価学会も宗教法人法の論議をリードできるなど与党を支えるメリットは大きいが、小泉首相の派遣方針を是認できないという痛しかゆしの状態にある。政治的にみれば、会員の中から派遣への異論が表に出てくることは、自民党への『連立相手の支持母体は揺れている』というメッセージにもなり、学会、公明党双方にマイナスではない」

 その上で、こうも指摘する。「現地の自衛隊が不測の事態に巻き込まれ、犠牲者が出た場合でも、強固な信条で結びついている学会と公明党の関係に影響は出ないだろう。ただ、夏の参院選を前に、内部的に反省を求める声が激しくなり、神崎代表など首脳部の責任問題は避けられないのでは」


http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040117/mng_____tokuho__000.shtml