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こうした懸念に、『いちよし経済研究所』主任研究員、鮫島誠一郎氏は「外食産業でも財務状態がベスト10に入る優良企業。それはないだろう」と次の見方をする。
「吉野家は店舗段階で利益率が25%と断トツ。最悪の場合、牛丼が消えて20%を切るかもしれないが、優良企業が『並』の企業になるだけで、吉野家より先に倒れる会社はいくらもある」
吉野家ディー・アンド・シーの安部修仁社長も今週の経済各誌で「無借金経営でキャッシュも200億円ある」「2〜3年間は何もしなくても社員の給料を払える」と語り、経営不安の火消しに懸命だ。
折しも、国内の鳥インフルエンザ感染が報じられる中、13日から『焼鶏丼』の販売を始めた同社。『カレー丼』の代替メニューだけでなく、禁輸が3カ月以上続いた場合の第2段階、1年以上の第3段階までを想定し、新メニューの開発などの検討にも入っている。
3年前のBSE禍では恐怖ばかりが先行し、一時客足が遠のいたが、今回は牛丼存続を願って、吉野家にエールを送るファンが多い。
投資情報会社『インフォストックスドットコム』のチーフアナリスト、鈴木一之氏は「多いときは週3、4回通う」という吉野家フリーク。
「280円のランチで戦う相手はコンビニの弁当、立ち食いソバ、ハンバーガーなどあるが、米を使った和の分野でこの味、このボリュームはない。同業他社と比較しても肉そのものが図抜けておいしい」
鈴木氏は私的見解としながら、「『松屋』は脂っこいし、『すき家』は煮込みすぎ。『神戸らんぷ亭』も脂身が多く、42歳の身では週4回食べられない」と話す。
株価の推移には、「『事故に売りなし』という市場の格言がある。工場炎上や不祥事で一時下げても、そこがボトム。まして今回は企業に悪意はない」と、BSE報道直後の下げが底とみる。
吉野家の本社(東京都新宿区)には先週末までに約500通のメールが舞い込んだ。
「『メニューが替わっても食べます』といった激励が7割、『リスク管理が甘い』などお叱りが1割、後は質問や提案をいただいてます」
創業から105年。気がつけば吉野家は全国に973店も広がり、生活の中に定着した。
中島みゆきの名曲『狼になりたい』では、夜明け間際の吉野家が、都会の悲哀に満ちた光景として描かれた。最近も、はなわが歌う『佐賀県』で、やっと佐賀に開店した牛丼屋は“オレンジの看板だけど名前は吉田屋”と笑わせた。実際は佐賀にも吉野家はある。
ヒット番組『料理の鉄人』でグルメブームを巻き起こした放送作家、小山薫堂氏は「ニュースを知り、すぐに食べたくなって吉野家へ行った。馴れ合いの恋人に好きな人ができたときのような気分で、やっぱりコイツが好きだったんだと再認識した。今まで安すぎてありがたみがなかった。牛丼がなくなる日が想像できない」と話す。
“恋人”への募る思いで、こう続ける。
「東海林さだおさん、椎名誠さんと小説誌で『新・日本食御三家』という対談をやり、寿司・天ぷら・スキヤキに続くものは何かと話し合った。カレー・ラーメンと、もう1つが激論となり、やっぱり牛丼だろうという結論に至った」
たかが牛丼、されど牛丼−。BSEショックは、“国民食”の存亡を大きく揺るがしている。
(吉野家取材班)
ZAKZAK 2004/01/17