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■平行線
米国のBSE発生確認後、初めてのトップ協議となった十五日の亀井善之農相とベネマン米農務長官の電話会談。やりとりは通訳を挟んで約一時間に及んだが、結果は予想どおり平行線で終わった。
ベネマン長官は、これまで通り「歩行困難な牛の食用禁止」や、生後三十カ月以上の牛の脳など「特定危険部位の完全除去」などBSE発生後に追加した安全対策の有効性を強調。早期の輸入再開を求めた。これに対し亀井農相は、食肉処理される牛の「全頭検査か、同等の効果がある措置」を主張して譲らない。
事務レベルの下交渉も不十分なまま行われた会談は、来週、米国が日本に代表団を派遣することで合意した以外に成果はなかった。
日本にとって米国産牛肉は、牛肉の年間総消費量九十三万三千トンの約26%を占める。輸入禁止による品薄感から牛肉全体の卸売価格は上昇気味。大半の店が米国産を使うチェーン店の牛丼は、このままいけば二月中旬には消える運命だ。しかし農水省は強気の姿勢を崩さない。「いつか来た道だけは、絶対に避けなければいけない」(同省消費・安全局)からだ。
日本で初めてBSEが見つかったのは二〇〇一年九月。農水省のずさんな対応は国民の厳しい批判を浴び、その結果、導入されたのが世界で最も厳格な「全頭検査」。昨年秋には、発生が否定されていた生後三十カ月未満の牛のBSE感染を見つけ「全頭検査」の効果があらためて確認された。
■非科学的
一方、大統領選を控える畜産大国・米国では、日本など三十カ国以上がとる「禁輸措置」の影響が広がっている。市場では牛肉価格が20%近く下落。世界最大の穀物メジャー・米カーギルは子会社の牛肉処理工場で従業員約七百五十人の解雇に踏み切った。禁輸措置が長期化すれば、今年の牛肉輸出は前年比で90%以上も落ち込みかねない。
この危機的事態に政治力の強い農業団体は不満を高めており、再選を目指すブッシュ大統領にとって頭の痛い問題だ。早くも農業関係団体はワシントンに押しかけ、関係国に「輸入解禁」への圧力をかけるよう政府や議会に迫っている。中でも日本は第一の標的。最大の輸出先で厳格な安全対策をとる日本が輸入を解禁すれば、他国の追随が見込めるためだ。
日本が求める「全頭検査」を米国が導入すれば問題は決着する。だが、米国が実施しているBSE検査の対象は、一年間に食肉処理する約三千五百万頭のうち、わずか二万頭。全頭となれば巨額の費用が必要で、「全頭検査は科学的ではない」という米農務省の反発の背後には、こんな事情も見え隠れする。
■メッセージ
禁輸措置が日米間で政治問題化しないよう細心の注意を払いながらも、農水省は消費者の不安をぬぐえないままの輸入再開を拒否する姿勢は崩していない。
とはいえ、このまま禁輸が続けば消費者や関連業界への影響は避けられない。米国産を代替えできる輸入先確保も現実には難しい。
このため、同省は非公式のルートで「少なくとも日本向けの牛は全頭検査を」「日米企業間で全頭検査を実施する方法もある」とメッセージを送り、「全頭検査と同等の効果がある措置」で解禁できる可能性を示唆している。
ただ、米国が歩み寄る気配はいまのところ見えない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20040116/mng_____kakushin000.shtml