2004年01月16日(金) 17時20分
グーグルの王座をねらうライバルたち(WIRED)
『Google』(グーグル)を世界で最も人気のある検索エンジンの座から引きずり降ろしたいなら、まずは列を作ったほうがいいだろう。
最近の報道によると、米ヤフー社、米マイクロソフト社の両社はすでに、次世代検索エンジン技術に向けた準備を開始しているという。急速に成長する検索広告市場のシェアを獲得しようとねらっているのだ。
http://www.kelseygroup.com/ 米ケルシー・グループ社のプログラム責任者、グレッグ・スターリング氏は次のように述べる。「2004年は『検索の年』になるだろう。多くの革新的技術が登場してきており、Googleにとっては大きな試練となる」
最も強力な競合相手はヤフー社になるだろう。同社はこれまで、米グーグル社にとっては、敵と味方という双方の立場にあった。
ヤフー社は14日(米国時間)、独自の検索技術に集中するため、
http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20040116105.html グーグル社との提携を打ち切る計画を発表した(日本語版記事)。
しかし、同社がここ数年にわたって20億ドル近くの費用をつぎ込み、検索技術を手がけるいくつかの企業を買収してきた様子を見てきた人たちにとっては、今回のニュースは驚くべきことではない。
検索業界の動きを追う人気のサイト『
http://searchenginewatch.com/ サーチエンジン・ウォッチ』の編集者、ダニー・サリバン氏は次のように話す。「ヤフー社が競争相手としてグーグル社を意識するのは、ニュースでも何でもない。同社は、米インクトゥミ社と米オーバーチュア・サービシズ社の買収を通して両社の技術を取得しており、グーグル社と競争するうえで非常に有利な立場にある」
「これに加え、ヤフー社は検索の世界のリーダーとして長期にわたる実績があり、今日でもYahoo!で検索を行なうかなり数のユーザーを抱えている」とサリバン氏は付け加えた。
調査企業の
http://www.nielsen-netratings.com/ 米ニールセン・ネットレイティングス社が2003年3月にまとめた、直近の検索傾向についての報告によると、検索を利用した訪問者実数では、『Yahoo!』はGoogleをわずか10%下回っていただけだという。
またニールセン・ネットレイティングス社が2003年11月に行なった、主要ポータルにアクセスした訪問者実数の調査では、Yahoo!のサイト全体へのトラフィックは8680万人で、Googleの5330万人を実際のところ上回っていた。
こうした数字に着目する多くのアナリストたちは、ヤフー社が検索市場で主要なプレイヤーに踊り出るためには、新しく取得した検索技術の中でどれを採用すればよいかを選択するだけですむ、と考えている。
「ヤフー社では、いわば何台ものスポーツカーが車庫でアイドリング状態になっているようなものだ。今こそどれに乗るかを決めるときだ」とケルシー・グループ社のスターリング氏は言う。
どのような決断を下すにしても、トップ争いには必ずマイクロソフト社が参加してくることは、ヤフー社の幹部も覚悟している。
レドモンドの巨人マイクロソフト社が「Googleキラー」となるべく動いているという噂は、1年以上前から取り沙汰されている。2003年5月、同社は独自の「スパイダー」——現在のロボット型検索エンジンにおいては不可欠なプログラム——を用いてウェブの分析を開始した。
マイクロソフト社は、同社の『MSN』部門が実際に独自の検索エンジン技術に取り組んでいることは認めたが、詳細についてはコメントを控えた。
サリバン氏によると、マイクロソフト社の動きは、ヤフー社よりも影響が大きいという。ひとえに、熱意そしてリソースにおいてマイクロソフト社が勝るためだ。
「マイクロソフト社は、グーグル社とヤフー社の双方にとって脅威だ。豊富な資金、優秀な人材、成功への意志を持っているのに加え、自社ウェブサイトはすでに、かなりの検索トラフィックを獲得しているからだ」とサリバン氏は説明する。
一方のグーグル社側は、競争に対抗する準備ができていると述べるが、具体的な方法については明らかにしていない。
グーグル社の広報責任者は次のように話した。「ライバル各社の存在を深刻に受け止めている。しかし1998年の設立当時から、われわれがつねに競争にさらされてきたことを忘れないで欲しい」
実際、『サーチエンジン・ウォッチ』のサリバン氏やケルシー・グループ社のスターリング氏とは異なった意見を持つアナリストもいる。
たとえば
http://www.jup.com/bin/home.pl 米ジュピター・リサーチ社のアソシエート・アナリスト、ネイト・エリオット氏は、多くの企業ではすでに、消費者への到達度を高めるために、複数の検索エンジンにまたがる広告キャンペーンを行なっている点を指摘する。検索エンジン企業の数が変わったところで、トップにいる企業の売上に影響は出ないはずだとエリオット氏は話す。
「この市場には、2、3社が競争できる十分な余地がある。私としては、グーグル社についてあまり心配していない」
しかしこのような意見を聞いても、まだサリバン氏は、この「検索の年」に際してグーグル社が動じないでいられると確信することはできない——とりわけ今年は、グーグル社が新規株式公開(IPO)を行なうとの見方が大勢を占めており、今後、投資家からのプレッシャーが高まると予想されるためだ。
「配信シェアやユーザーのシェアに少しでも陰りが見られれば、グーグル社にとってマイナスだ。投資家たちを安心させるための対応を迫られるだろう。現時点では、同社が気にする必要のないことだが」とサリバン氏は言う。「またグーグル社は、ペイド・インクルージョン[ロボット型検索エンジンへの有料インデックス化サービス]といった、現在は行なっていない方法で売上を増加させる必要に迫られるかもしれない」
スターリング氏も同じ見方をしている。そして、このように大幅な方針転換が起こった場合、ユーザーにそっぽを向かれる可能性があると指摘する。
スターリング氏は次のように話す。「グーグル社には、どのような手段を使っても売上を最大限に伸ばすというプレッシャーがかかってくるだろう。もし失敗すれば、彼らの有効性は損なわれ、代わりに誰かがその場所に収まることになる」
[日本語版:湯田賢司/多々良和臣]日本語版関連記事
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