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[裁判員制度]「導入の本来の目的に立ち返れ」
何が新制度の目指すべきものなのか、その視点が抜け落ちてはいないか。
有権者から無作為に選ばれた国民が裁判官とともに、刑事裁判に参加し、有罪、無罪などを決める「裁判員制度」である。
政府の司法制度改革推進本部が進める制度作りが、通常国会への法案提出をめざす最終段階で、立ち往生している。
改革推進本部の検討会は当初期限とした昨年末までに、意見を集約できなかった。自民、公明両党が与党協議を続けているが、意見は対立したままだ。
裁判員制度での判決は、多数決によっており、裁判官と裁判員の人数、構成比が、刑事裁判のあり方を左右する。それをめぐって、意見は対立している。
問題は、表面的な「人数問題」の対立に終始していることにある。
自民党は「裁判官三人、裁判員四人程度」と主張し、公明党は「裁判官二人、裁判員七人」の線を譲らない。
公明党の主張は、「裁判官二人以下、裁判員は裁判官の三倍以上」という日本弁護士連合会の案と共通している。
日弁連には裁判員を主役にすることで刑事裁判を抜本的に改め、「民主化」しようという姿勢がある。一般から無作為抽出で選ばれた陪審員が有罪、無罪を決める英米などの陪審制度を、念頭に置くものだ。
司法制度改革審議会は、裁判員制度のあるべき姿を検討した結果、二年半前の最終意見書で、その目的を、国民の健全な社会常識を刑事裁判に反映させることとし、陪審型を排除した。
職業裁判官を中心とする「真実解明」という現在の刑事裁判制度から逸脱し、裁判官数の数を大きく上回る裁判員の判断が優越することで、被告が不利にならないか、という配慮からだ。
最終意見書はさらに、裁判官と裁判員が対立することなく、意思の疎通が十分できる範囲内の人数構成を提言した。裁判官と裁判員の人数が、適度に均衡するコンパクトな形が想定されている。
陪審型の色彩の濃い、日弁連や公明党の主張は、こうした意見書の趣旨にそぐわない。
裁判員制度では、「人数問題」に集中するばかりで、いかに国民が参加しやすい仕組みにするか、などの重要な議論がいまだに尽くされていない。
より良い裁判員制度のためには、裁判官と裁判員の人数や構成を含めて、一定の試行期間を置き、制度をより望ましい形に見直していくことも一案だ。
法案の国会提出を焦る余り、新制度の基本設計に禍根を残してはならない。