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2004年01月14日(水) 12時42分

社説1 競争促進策は経済活性化に欠かせぬ日経新聞

 公正取引委員会が国会提出を検討している独占禁止法の改正案に経済界の一部などが反発している。

 今回の改正は談合など違反行為の取り締まりを強化するほか、公益事業への新規参入をしやすくするのが狙いだ。談合など不正をなくすのは当然だし、何より経済活性化のため企業間の競争促進は欠かせない。経済界などの反対は理解に苦しむ。

 法改正の柱は行政処分である課徴金(売上高の6%)の引き上げや違反行為を自首した企業への課徴金減免制導入のほか、通信なら通信回線、電力なら送電線のように公益事業に不可欠な施設を持つ企業が新規参入企業にそれを使わせないとか差別するのを明確に禁じることなどだ。

 課徴金引き上げについて建設業界は「違反企業には課徴金のほか罰金、違約金、入札の指名停止などすでに多くの制裁措置が科されている」と反対する。だが、そうであればなぜ談合が後を絶たないのか。各種調査によれば談合で落札した企業の利益率は20%程度、違約金を取られても10%程度で、6%の課徴金を徴収されてもお釣りがくる。違反を繰り返すのは当然であり、課徴金は低すぎる。実際、欧米に比べ違反への制裁や罰金はけた違いに軽い。

 また、公取委が引き上げの理由として「不当に得た利益のほか、カルテルで値段がつり上げられ買えなかった人々がいるなど社会的損失も勘案する」と説明しているのに対し「不当利得を超える徴収は罰金の性格を持つが、独禁法には罰金刑の規定もあるので憲法の二重処罰禁止に触れる」という反発もある。

 だが脱税への重加算税などこの種の行政処分は多い。また日本は米国などに比べ刑事告発に持ち込むのが難しく、多くは行政処分とせざるを得ない現実も考慮すべきである。

 公益事業の独占・寡占規制の強化では、通信業界を所管する総務省や電力業界担当の経済産業省などからも「業法での規制で十分」という反対がある。だが新規参入企業からは「電線や通信回線を持つ企業に不当な取り扱いを受けた」という声が絶えない。公取委が警告を発しても違反は繰り返されている。業法が十分機能していないのは明らかで、独禁法に基づく強い規制は必要だ。

 自民党内には「景気が悪い今、なぜ競争促進なのか」という声もある。厳しい競争が企業の収益力向上につながるのは自動車業界などをみても明白だ。また公益事業で新規参入企業が自由に活動できれば設備投資も増えよう。経済をよくするためにこそ独禁政策の強化が肝要である。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20040114MS3M1400D14012004.html