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予言は半分だけ的中した。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車など日本勢の現地生産台数は北米で当時の3倍強の約350万台になった。しかし輸出は約180万台と横ばいで減少していない。現地生産車プラス輸出で、米国市場の日本車のシェアは過去最高の29%弱と3割目前まできている。
ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ダイムラークライスラーのビッグスリーは低迷が際立つ。3社合計のシェアは史上最低の60%。60年代には9割のシェアを誇ったことからみれば、凋(ちょう)落という言葉がぴったりだ。
日本車の躍進はこれからが本番だ。これまでビッグスリーが95%のシェアを独占し利益率の高いピックアップトラック分野(約300万台)に、一斉に進出を始めるからだ。世界的な競争激化で米企業だけに配慮していられないという理由だ。
4日から米デトロイトで開催された北米国際自動車ショーでは、日米競争の転機となる日本のピックアップトラックに注目が集まった。
トヨタはテキサス州に北米で6番目の車両工場を建設中で、2年後からピックアップトラックを生産する。ショーで発表したコンセプトカーは、高馬力のV型8気筒エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載している。
日産はこのショーでピックアップトラックなど米車と真っ向からぶつかる大型車の展示に絞り、今秋から売り出す。ホンダも、外観はピックアップトラック、構造は乗用車と乗り心地を良くしたコンセプトカーを発表した。
日本の3社とも、環境技術や運転性能など、これまでの高馬力だがガソリンをがぶ飲みするというピックアップトラックのイメージを一新する工夫を凝らしている。現地の自動車評論家でなくても、日本勢がさらにシェアを食うことになることは、新車開発を見ればわかる。
日本車の強さは故障しにくいなど品質の良さ、燃費効率や環境対応など10年前からいわれた特色と変わっていない。米国車以上に日本車の改善が上回っていることに尽きる。
90年代半ばには日本車の攻勢から立ち直ったといわれたビッグスリーの経営者は何をしていたのか。
米自動車市場が好景気や人口増で1700万台前後と90年前後に比べ500万台以上も膨らんだことが大きい。好景気による高収益が10年以上も続き、ビッグスリーは業務改善や技術開発以上に、日欧の自動車メーカーの買収や新規事業の展開に走った。現場軽視の経営のツケが自国市場での競争力低下だ。
「アメリカンプレーヤーになった」。こう宣言したトヨタが最もビッグスリーの脅威となっている。米市場でカムリは2年連続のベストセラーカー。ハイブリッド車のプリウスは2004年の「カー・オブ・ザ・イヤー北米」を獲得。最高級車部門ではレクサスがBMWやメルセデスベンツを抑え4年連続で販売台数1位。昨年の北米販売台数は、209万台と米企業以外で初の200万台突破という具合だ。
経営者の危機感がカギ
トヨタやホンダは連結決算では今や米国市場の利益の貢献度が7、8割といわれ、カルロス・ゴーン社長が率いる日産も米国での収益が再生の源になっている。米国市場に依存し過ぎという批判はあるが、ドラッカー氏の懸念した日米摩擦は再燃しないとみる向きが多い。
GMは「円安で日本勢は米市場に利益補てんしている」と攻撃しているが、直接的には日本車のシェア上昇には言及していない。現地生産化が進んだのと日本市場の開放だ。日本の自動車メーカー11社のうち、トヨタグループ、ホンダを除けば7社が外資傘下で、ビッグスリーは5社を傘下に収めているからだ。
ビッグスリーが再生するには、米国の消費者に支持される魅力ある車を出すしかない。経営者の油断を除けば、人材や技術開発投力、資金など十分な底力はある。
日本の自動車産業は、「失われた10年」ではなく「飛躍の10年」となった。経営者と従業員が一体となった危機感の持続、研究開発への意欲、コスト低減など不断の改革努力こそ勝利の道というのが教訓だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20040112MS3M1200H12012004.html