2004年01月10日(土) 17時15分
成人式からマルチ商法追い出せ、注意喚起あの手この手(読売新聞)
成人式がマルチ商法(連鎖販売取引)勧誘の場になることを防げ——。12日の成人の日前後に成人式を開く自治体が、式の中で注意を呼びかける講演会を行ったり、パンフレットを配布したりするなどして警戒を強めている。
マルチ商法が広がっている首都圏の大学生らが、かつての同級生などを勧誘し、被害が拡大する恐れがあるためだ。
茨城県東海村が10日午後に開いた「成人の集い」では、同県日立市の元消費生活センター長の江尻芳枝さん(70)を講師に、マルチ商法にだまされないための講演会が行われた。
初めての試みとなる講演会は、実行委員を務める新成人らのアイデア。東京都内の大学に通う実行委員長の照沼光譲(てるぬま・あきよし)さん(20)は「マルチ商法などの被害の話を身近に聞いている。お祝いの場がそうした勧誘の機会になってほしくない」と、企画の意図を話す。
新たな参加者を次々に勧誘すれば、ねずみ算式に報奨金が増えることをうたったマルチ商法は、これまでも大学のサークルなどを通じて広がっているが、同窓生が集まる成人式は、勧誘の機会になりやすい。実際に昨年、岐阜市の成人式に出席した男性が「式後に開かれた高校の同窓会で、30万円のリゾート会員権の契約を結ばされた」という相談を同市消費生活センターに寄せている。
このほか、「起業」を掲げて勧誘するケースなどが目立つ。都内の女子学生は昨年、友人から「知り合いが会社を興した」と説明会に誘われた。「頑張った分だけお金が入るから販売組織に入って」と説得され、学生ローンで借金して10万円の健康食品を買ったが、売れずに借金だけが残った。
特に今年、自治体関係者が心配しているのは、首都圏の大学生を中心にマルチ商法が広がっているため。東京都消費生活総合センターによると、昨年4—9月に東京都と埼玉、千葉、神奈川の3県の消費生活センターに寄せられた大学生らのマルチ商法に関する相談件数は473件で、前年同期の1・5倍に上った。
東京都消費生活相談センターの坂本かよみ係長は「就職難や学生の起業ブームなどを背景に、一獲千金を狙おうという心理が働いている」と話している。
関東甲信越地区の消費生活センターなどは成人式に合わせ、共同で悪質商法被害防止のためのパンフレットを新成人に配る。
◆マルチ商法=商品の販売組織に加入させ、健康食品や化粧品などの商品や会員権サービスを買わせ、次々に組織への加入者を増やしていくと利益が得られると勧誘する問題商法。特定商取引法で「連鎖販売取引」として規制し、「簡単にもうかる」といった断定的な説明を禁止している。契約後20日以内はクーリング・オフ規定により解約できる。国民生活センターに寄せられたマルチ商法の相談件数は昨年度、2万453件。このうち契約者の約半数は20歳代の若者。(読売新聞)
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