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[決断の年]「治安回復への道筋 無防備社会からの脱却が急務」
【危機的状況を直視せよ】
警察庁は「昭和期の二倍」と言う。最近の犯罪情勢を端的に示す表現だ。戦後長く年間百五十万件以下で推移してきた刑法犯罪の発生件数が、今は三百万件に近づいている。外国人の検挙者数は一九八〇年の約十倍である。
法務省も、この十年間で、検察庁が警察や海上保安庁、税関から受理した事件数は三割、受刑者数は五割、それぞれ増加した、と指摘している。
「世界一安全」と言われた日本の社会は、大きく変わってしまった。かつての「安全神話」の意識のままでは、犯罪に対処できない。安全な社会を取り戻すためには、何よりも、この現実を直視する必要がある。
東京都が先月実施した調査では、九割の人が「空き巣やひったくり、通り魔などの被害に遭う不安を感じている」と答えた。身近で犯罪が多発していることを考えれば、いつ我が身に、と思うのも当たり前のことだ。
内閣府が昨年実施した調査では、三人に一人が「外国人観光客は増えて欲しくない」と答えた。「観光客を装った犯罪者が入国するのが心配だから」というのが、その理由だった。
本来なら、多くの観光客が訪れ、日本のよさを知ってもらいたい。そう思うことができないのは不幸なことだ。これもいかに外国人犯罪の脅威が高まっているかの反映である。
こうした不安から、自ら犯罪に対処する動きとして、最近の防犯カメラの普及がある。商店街や団地の自治会で独自に設置するところが増えている。「安全は何物にも代え難い」という共通した思いからだ。
東京都杉並区のように、「プライバシーの侵害や監視社会になるのを恐れる声もある」という理由から、条例を制定して、設置方法や映像の利用について一定の枠をはめようとする動きもある。「防犯カメラ」ではなく「監視カメラ」という表現もしている。
【深刻な規範意識の低下】
これでは、通信傍受法を「盗聴法」と言うのと同じだ。警察の動きを縛るような感覚で対策にブレーキをかけるようでは、かえって犯罪者を利するだけだ。
「治安過疎」という言葉が言われ始めている。警察官が少なく、防犯設備も不十分な地域のことだ。防犯カメラの設置費用の一部を助成する自治体も増えているが、当然の対応だ。「治安過疎」をなくすために、警察と自治体は緊密に連携していく必要がある。
昨年は、政府として初めて、治安問題を最も深刻かつ重要な政策課題と位置づけた年だった。犯罪対策閣僚会議が「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」をまとめ、青少年育成推進本部が「青少年育成施策大綱」を策定した。
今年は、行動計画や大綱に盛られた各種の施策を実行に移す年だ。治安回復への道筋をつける、「治安対策元年」としなければならない。
「川下でいくらゴミを拾っても、川上からどんどん流れてくる」と捜査関係者は言う。摘発しても摘発しても、それ以上に、新たな犯罪者が出てくるというのだ。その典型は少年犯罪である。
少子化もあって、少年の検挙者数こそ横ばいだが、少年人口千人当たりでは増加傾向が顕著だ。検挙率の落ち込みを考えれば、数字以上に深刻化している可能性もある。
二十代の未熟な若者による、少女の連れ去りなどの犯罪も多発しているが、これも同類だろう。
社会全体の規範意識や地域の教育機能が低下している。法務省や家庭裁判所の調査では、家庭にも問題がある。治安問題の根本解決のためには、これらを健全な姿に戻していくことが不可欠だ。
外国人犯罪にどう対処するかも、緊急の課題である。戦後一貫して豊かさと利便性を追求してきた社会が、国際化の進展の中で、中国人犯罪者などの格好の標的となっている。
【テロへの備えも重要だ】
平穏で安全な社会を守っていくためには、無防備な態勢を見直していくことが欠かせない。
在留資格や入国の審査を厳格にし、罰則も強化しなければならない。企業や個人にも意識の変革が求められる。
国際テロ集団「アル・カーイダ」を名乗る組織が、イラクに自衛隊を派遣すれば東京を攻撃すると威嚇している。
これに対し、小泉首相は「脅しに屈してはいけない」と述べた。確かに動揺は禁物である。だが、テロの抑止は、付け入る隙(すき)を与えない、万全の体制があってこそ可能となる。
情報収集能力や水際のチェック体制は大丈夫か、テロに同調するような国内の不穏分子の把握はできているのか。改めて総点検を求めたい。