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「民間交番」に足を運んだ。
世田谷区の京王線明大前の駅前にあるプレハブ建物だ。地元住民が交代で詰めて、パトロールにも出る。
住民は警察へ何度も陳情したが、予算上の理由で交番は実現しなかった。三年前から、ボクシングトレーナー吉川英治さん(43)とボクシングジムの若者による自警団が始まった。商店主らも加わった。熱意に打たれて都と京王電鉄が土地を貸し、一昨年二月に区が建物を提供した。
■自主防犯に支援が必要
この冬も夜間パトロール隊が二人一組で巡回する。そろいの蛍光色のジャンパー姿、誘導灯で暗がりを丹念に照らしながら進む。手にした鈴の音が町中に響く。
塾帰りの子どもたちに、隊員が「気を付けて帰るんだよ」と声を掛ける。「ご苦労さま」とねぎらいの言葉を返す人もいる。地道な防犯活動が街の一体感につながっている。
小学生の通学路のパトロールも行っている。この校区では女子児童への痴漢被害は十九カ月ゼロが続く。ひったくりや窃盗は約三割減った。
本物の交番を明大前駅前に設置することが最近内定した。でも、住民パトロールは続ける。自分たちの街は自分たちで守る姿勢ができているからだ。
こうした自主パトロールは各地で芽生えている。実行には人員確保と安全対策が課題だ。各地でノウハウを知りたがっている。明大前駅前の住民も、それぞれの地域の新しいパトロール隊の発足を後押ししている。自治体もこうした活動を積極的に支援してほしい。
治安への住民不安は予想以上に深刻である。東京都の住民アンケートで「犯罪に遭うかもしれないという不安や心配を感じている」人が約九割にのぼった。
■犯罪摘発に連携強化を
「軽微な犯罪を手がけてくれない」「一一〇番通報してもパトカーの到着が遅い」「暗がりに防犯灯を設置してほしい」。こうした声を警察や自治体はきちんと受け止めて、施策に生かす必要がある。
警視庁は昨年「治安回復元年」と銘打った。都は元広島県警本部長の竹花豊氏を副知事に招き、治安対策に取り組み始めた。
竹花副知事が重視しているのは(1)外国人犯罪の防止(2)少年犯罪の抑止(3)安全安心の街づくり−の三つである。警視庁、都、東京入国管理局との連携を一層進めてほしい。
特に外国人の組織犯罪は住民の不安を募らせている。最近は中国人の犯罪が目立つ。中国人と暴力団が結びついたケースも出ている。
首都圏に約十五万人いるとみられる不法滞在外国人のチェックが当面の課題である。
眠らない街、新宿の歌舞伎町は外国人犯罪の温床といわれる。歓楽街に約二千六百店舗がひしめく。
その歌舞伎町に昨年四月、東京入管が新宿出張所を出した。摘発専門の入国警備官と入国審査官の計四十一人を投入している。
月平均百人の摘発成果を挙げている。「入国審査官と入国警備官、それに警察官が三位一体となり効率の良い摘発をしていく」(及川正明所長)。この歌舞伎町方式を広げるよう要望する。
「水際」の入国審査も問題だ。一昨年の外国人の入国は五百七十万人もあり、空港の審査場で不法者をどう見分けるか。顔写真の照合だけでは難しい。
目の虹彩、顔の輪郭から本人と区別する最新の方法を米国では検討している。声紋情報を採用する方法もある。人権に配慮しながら、新しい認証システムの開発が急がれる。
「外国人狩りをやるための出張所ではない」と及川所長は強調する。大多数の外国人は異国の生活にまじめに取り組んでいる。外国人犯罪の摘発が外国人狩りの風潮を招いてはいけない。
一方、少年犯罪にどう取り組むか。都は万引防止、屋外落書きへの対応を検討している。有害図書を読ませないための対策も条例化の準備をしている。家庭、地域社会挙げて、犯罪につながる芽を摘む姿勢が必要である。
竹花副知事は「これまでは縦割り組織で仕事をやっていた。警察は交通、少年、刑事がばらばら。県も市町村もそれぞれ単独でやっていた」と反省し、「広島県警では自治体、住民と一緒にやっていけば犯罪対策に一定の成果を得られるという確信を得た。社会的な総合力をどうつくりだすかだ」と指摘する。
■問題は社会のあり方だ
民間交番の吉川さんはまだ満足していない。「パトロールで犯罪が減った。街の一体感ができた。でも、傷口に塗り薬を塗った程度にすぎない。本当のウミは社会の構造や大人のあり方だ」
住民一人ひとりの意識から始まって、社会全体で犯罪をなくしていく一歩としたい。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20040104/col_____sha_____001.shtml