2003年12月28日(日) 00時00分
汚染源特定年越し 神栖ヒ素汚染(朝日新聞・)
環境省が神栖町で実施している、旧日本軍の毒ガスに由来する有機ヒ素化合物の汚染源調査は年内の調査を終えた。健康被害があった井戸(A井戸)周辺では、これまでに最高で基準の1800倍の有機ヒ素を検出した。「汚染源は近い」(同省)とみられるものの、特定できないまま年を越す。一方、A井戸利用者と、西に約1キロ離れた地区(B地区)で、これまでに92人が国の緊急措置の対象者となった。
県環境対策課によると、A井戸は当時、8世帯が使っており、周辺の井戸に比べて給水力の強いポンプが使われていた。このため有機ヒ素が高濃度になり、健康被害につながったとみられる。
1800倍の有機ヒ素は、A井戸の南西10メートルの地点を11月にボーリング調査したところ、深さ20〜25メートルから検出された。近くの2カ所からも同時に、1600倍や1200倍を検出した。環境省はその後、この3カ所を中心に約20本をボーリング。調査の穴は約80本になった。
しかし、周辺は常陸利根川下流の豊富な地下水があり、砂地で地下水の流れも分かりづらく、調査は難航している。
県は来年度から、給水施設条例を改正し、井戸水を使うすべての賃貸住宅の所有者に、滅菌装置の設置や定期的な水質検査を義務づける。現在の「50人以上の施設」から、一戸建てやアパートなど、1人でも住人がいる住宅に対象を広げる。
緊急対策で医療費や定期検診が受けられる「医療手帳」は、12月17日までに288人が申請。井戸水やツメ、毛髪などの検査で、171人は有機ヒ素の影響を受けていないことが分かった。25人は調査中。今のところA井戸利用者とB地区住民以外に被害は広がっていない。
当初、歩行ができなかった当時1歳の男児も歩けるようになり、「ヒ素が順調に体外へ排出されているとみられる」(県保健福祉課)という。
(12/28)
http://mytown.asahi.com/ibaraki/news02.asp?kiji=6812
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