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病気とのつきあいの長かった作家・遠藤周作さんが「患者からのささやかな願い」というエッセーを本紙に寄せたのは一九八二年◆それから二十年余、〈医者がみた遠藤周作〉(吉田豊著)が先月、刊行された。著者は内科医で元弘前大学長。この本は〈心あたたかな医療〉を求め続けた遠藤さんの遺志に共感して書かれた◆「医学は患者に始まり、患者と共にあり患者と共に終わる」「倫理の根源は生命への畏敬(いけい)に始まる」「医の道は弱者への無限の同情」「医の心、恕(じょ)の心」……数々の言葉が出てくる◆いずれも遠藤さんの願う心あたたかな医療に通じる。患者の心を知り共感する医師、看護師こそ遠藤さんの求めたものだ。医師の立場でこの本が書かれたのがうれしい◆ひるがえって今年を思う。医療事故が絶えなかった。きのう初公判のあった東京慈恵会医大青戸病院の手術ミスは事故というよりは暴走事件に近い。指導医も経験もなしに、難易度の高い手術を実施、医師三人が業務上過失致死罪に問われた◆遠藤さんの願いの対極にあるような医療をなくしたい。