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米国・ワシントン州でBSE感染の疑いのある牛が確認されたのは、食肉処理の際、歩行困難など神経症状を示したことがきっかけだった。
その感染牛の肉はすでに食用として消費された可能性がある。脳や脊髄(せきずい)など、BSEの病原体が蓄積されやすい部位は除去されているので、消費者への二次感染の危険性はほとんどないと米国政府は強調している。
だが、この一報を聞いた日本人の多くは、米国のBSE検査体制の甘さに唖然(あぜん)としたに違いない。
わが国では二〇〇一年九月に初のBSE感染牛を確認後、一カ月余りで、すべての牛について出荷前に感染の有無を調べる「全頭検査」を開始し、感染牛の肉はすべて焼却処分されることになっているからだ。
その結果、国内でこれまでに九頭の感染牛が確認されても、それが不安を呼ぶよりも、むしろ「きちんと検査が行われている証拠」と消費者に安心感を与えてきた。
BSE多発の欧州各国が検査を生後二十四−三十カ月以上の牛に限っているのは「三十カ月未満には病原体は蓄積しない」というのが理由だが、十一月に広島県で感染が確認された九頭目は生後二十一カ月で、欧州の常識を破ってしまった。
わが国は、米国から国内消費量の四分の一を占める牛肉を輸入している。欧州に続き、ことし五月、感染牛が初めて確認されたカナダからも輸入を禁止し、輸入再開の条件として、日本と同レベルの「全頭検査」の実施を求めている。当然、米国に対しても同じ姿勢で臨む必要がある。これは「貿易障壁」などとは次元の違う問題である。
国内産牛肉に対して、厳格な「全頭検査」を求め、輸入牛肉に甘くする二重基準(ダブルスタンダード)を認めれば、せっかく「全頭検査」で築いてきた消費者の信頼を一挙に失う。検査を受けない牛肉を輸入してはならない。
さいわい、農林水産、厚生労働両大臣は米国に対して「全頭検査」を求め、福田康夫官房長官も「日本に安心して消費してもらいたければ米国も考えなければならない」と述べている。消費者の立場に立って、その姿勢を貫いてもらいたい。
今後、既に輸入されている米国産牛肉を国産と偽って販売する事態が懸念される。行政は、偽装表示の監視を怠ってはならない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20031226/col_____sha_____002.shtml