2003年12月25日(木) 12時56分
社説2 牛肉輸入は安全確保第一で(日経新聞)
とんだクリスマスプレゼントである。米国でBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)感染の疑い濃厚な牛が見つかったことで、稼ぎ時の国内市場は直撃を受けている。
一昨年の国内でのBSE発生以来、消費者も経験を積んでおり、恐慌を来す心配はないが、とにかく国内に出回る牛肉は安全だという消費者の信頼を失わないことが第一だ。政府の米国からの牛肉輸入一時停止は当然の措置だ。牛肉の在庫はほぼ1カ月分あるから、当面は冷静に対処し、価格高騰などの市場の混乱を最小限に抑える必要がある。
米国でのBSE発生が確定し、長期にわたる輸入禁止となれば、国内市場は大きな穴が開く。主な代替輸入先はオーストラリアとニュージーランドに限られているが、国産と合わせ米国産牛肉の穴を少しでも埋める努力をするしかない。
問題は将来の輸入解禁をどう考えるかである。日本は欧州などのBSE発生国からの牛肉輸入を全面禁止している。5月には新たにBSEが発生したカナダからの輸入も禁止した。カナダからの輸入再開要求は強いが、検査体制などが日本の消費者の安全安心を確保するのには不十分として受け入れていない。
米国はオーストラリアに次ぐ第2位の大口輸入先だが、これまでとは違う対応は取れない。米国に対して、BSE発生状況の詳しい情報提供と甘い検査体制の改善を求めていかなければならない。
しかし、日本と米国とでは検査体制に開きがありすぎる。日本ではと畜する牛の全頭検査をしているのに対し、米国ではその割合は0.1%にも満たない。欧州連合(EU)でも月齢30カ月以上などの牛に対象を絞っており、日本の検査は過剰という指摘も受けている。ただ、それによって新型とみられるBSE感染牛が見つかったのも事実だ。
米国は今後、日本に対し早期輸入再開を求めてこよう。対応次第では、8月の牛肉の緊急輸入制限(セーフガード)発動に続き、貿易摩擦に発展する恐れもある。全頭検査体制確立を輸入再開の条件とするかどうか、改めて判断を迫られよう。外部からの圧力を受けない中立的な食品安全委員会の判断が重みを増す。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031225MS3M2500V25122003.html