2003年12月24日(水) 15時08分
<BSE>米国牛の不安ジワリ 業界は安全強調(毎日新聞)
米国でBSE(牛海綿状脳症)に感染した疑いのある牛が24日、発見された。米国産牛は国内消費の4分の1を占めるだけに、消費者の不安が広がるのは避けられない見通しだ。外食業界は豪州産などへの切り替えを検討し、一部のスーパーでは米国産牛の商品の撤去を始めた。牛肉全体の価格の高騰を懸念する声も上がっている。
◇牛どん
牛どん業界では、大手チェーン店の多くが米国産の輸入牛を9割以上使用しているという。99%を米国産に頼っている「吉野家」の広報担当は「米国産牛肉がほとんどだが、プリオンに感染していないと言われるバラ肉なので大丈夫。安全性をPRする張り紙を店頭に出す方向で検討中」と話す。在庫が1カ月分あるため当面の営業に影響はないというが、今後は、豪州産牛肉への切り替えも検討せざるをえないという。
松屋フーズ総務部は「原料の牛肉はすべて米国産だが、米国食肉輸出連合会の検査体制がしっかりしているので安全と認識している。しかし、輸入の禁止期間がどの程度になるのか、決まってみないと何とも言えない」と当惑している。
◇レストラン
ファミリーレストランなどでも、米国産牛肉を使用している店は多い。レストランの全国チェーン「ロイヤルホスト」(341店)は、主に豪州産牛を使っているが、9月からは牛肉の8品目のメニューのうち、3品目に米国産牛を使用している。経営する「ロイヤル」(本社・福岡市)はこの日、情報収集や代替品の仕入れルートの検討などに追われた。
同社広報室は「年末年始を控え、外食自体を避けるのか、(牛肉以外の)メニューを選ぶのか、お客様がどう動くか読めない。現在は生産地の表示をしていないが、それも含め、お客様に安全性をどう説明するかなども検討している」と話している。
ステーキハウスチェーンのフォルクス(本社・東京都新宿区)は「米国産と豪州産を半々で使用しており、メニューには原産国を表示している。不安だと言うお客様には豪州産を勧めるよう全国132店舗に連絡をしたところだ。だが、米国産牛が輸入停止となると、国産牛を検討せざるを得ない。そうすると値段も高くせざるを得ない」と頭を抱えている。
一方、豪州産の牛肉のみ使用している「日本マクドナルド」でも、広報担当者は「今回のことで輸入牛がすべて危ない、控えようと考える人が増えると改めて対応を考えなくてはならない」と話した。
◇スーパー
スーパー各社も情報収集を急いでいる。
イトーヨーカ堂、イオン、ダイエーは「まだ詳しい情報が入ってこない」として、担当者が情報収集に奔走している。イトーヨーカ堂は「今回BSE感染牛が確認されたホルスタイン種は輸入していない。また、米国西部地域からの輸入も行っておらず、現在店頭で販売している肉は安全」と安全性を強調する。しかし、政府が米国からの輸入禁止の方針を決めたことで「今後の対応は協議中」としている。
中堅スーパーのサミット(本社・東京都)は、24日の開店当初から、73店全店で米国産牛肉を使った「牛カルビ」「牛タン」を自主判断で撤去した。消費者の心情を考慮しての措置で、1店当たり数キロの肉が店頭から消えた。
マルエツ(同)は、牛肉の販売量の48%が米国産。ワシントン州からの輸入はないが、「政府の判断を見て対応したい」と今後の対応に苦慮している。【小林理】
今回の件について、「食品と暮らしの安全」編集長(日本子孫基金事務局長)の小若順一さんは「米国はBSEは出ないという大前提に立ち、欧州並みの対策すら取ってこなかった。BSEのリスクが高かったので、確認されたからといっても違和感がない」と話す。そのうえで、「日本で輸入牛が米国産から豪州産など比較的安全な市場へとシフトしてこなかったことのほうが問題だ。米産牛の買い控えなど日本で影響が出るだろうが安全が確認されるまではやむを得ない」と語った。(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031224-00001060-mai-soci