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2003年12月24日(水) 15時21分

春秋日経新聞

 今でこそ米国畜産品の象徴の感がある牛肉だが、消費量で初めて食肉の首位に立ったのは、たかだか半世紀前という。1621年のプリマスでの最初の感謝祭には七面鳥や鹿(しか)肉は並んでも牛肉はなかったらしい。数年後、植民地に現れた牛も乳牛だったそうだ。

▼代わりに米国人の蛋白(たんぱく)源を担ってきたのは放し飼いでも十分育つ豚で、カウボーイより、豚追いを意味するhogboyが幅を利かした時代も。だがM・ハリスの「食と文化の謎」によると、工業製品さながらの効率的な牛の肥育システムの考案と、裏庭での炭火焼きという新奇な生活スタイルの登場が、豚肉消費との順位を逆転させた。

▼牛ひき肉ハンバーガーの登場は1900年前後というが、女性の職場進出など米国の急激な社会変化も、20世紀を「牛肉の世紀」たらしめた一因といえよう。その米国で初めてBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)感染を疑われる牛が現れた。

▼日本政府は直ちに輸入停止措置に踏み切ったが、牛肉の国内需要の約4分の1が米国産とあっては、価格の行方が気がかりだ。外交の火ダネにもなりかねない。肉食の歴史の浅い日本が、牛肉好きになって日の浅い米国の影響をかくも受けてしまうという皮肉は、本来、保守的なはずの食文化における変容の早さを改めて気付かせもする。

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031224MS3M2400V24122003.html