2003年12月21日(日) 00時00分
宿泊拒否問題で和解 「まるで別人のよう」(朝日新聞・)
「私たちと同じ境地で考えてくれた。まるで別人が来たようだった」 合志町の国立ハンセン病療養所菊池恵楓園の入所者の宿泊を拒否する問題が発覚して約1カ月。ホテルを経営するアイスターの江口忠雄社長が「当時の判断は誤り」と、3度目の訪園で全面的に謝罪したことで、元患者らの間には、これまでの不信感から一転して、歓迎ムードが広がった。
「熊本空港に着きました。今から、直接謝罪文をお渡ししたい」
午前9時過ぎ、入所者自治会の太田明会長は、アイスターの江口社長から電話を受けた。江口社長が社長室長と2人で園を訪れたのはその30分後。自治会側は、太田会長ら幹部5人が応対した。約50分に及んだ話し合いは、終始穏やかな雰囲気で進んだ。
太田会長が「よく来てくださいました。謝罪文を受け取って次の段階に進みたい」と切り出すと、江口社長は全国の療養所を回り、ハンセン病への理解を深めてきたことを説明した。引き締まった表情からは緊張感が隠せない。
「私たちの認識不足を反省したい」。最後は深々と頭を下げた。
太田会長は「快く謝罪を受け入れたい。短期間で全国を回ったのは大変だっただろう。その努力を評したい」と労をねぎらった。
会談終了後、太田会長は報道陣に「誠意ある対応に謝罪は本物だと感じた。今回の問題を機に、ハンセン病への正しい理解が広がれば」と話した。
太田会長と江口社長の主なやり取りは次のとおり。 (敬称略)
=太田= ホームページを見させてもらった。大きく姿勢が変わっており、敬意を表す。
=江口= 全国の療養所を訪ね、対話の中からいろんなことを学んだ。厳しいおしかりも受け、ハンセン病に対する認識のなさを反省した。これから全国の施設を回って、みなさんに(今回の謝罪を)報告したいと思っている。
=太田= 今日、突然訪問してきた理由は。
=江口= 出来るだけ早く(菊池恵楓園の)みなさんに会い、全国を訪問したかったかったから。
=太田= ハンセン病には、社会から隠そうとされてきた長い歴史がある。
病気自体が、まだ社会的に認知されていない。
=江口= 私自身、正しい情報を知らなかった。啓発資料には「ハンセン病は感染しにくい感染症」とあり、乳幼児など抵抗力の弱い人には感染してしまうような勘違いを受けた。だが、施設を訪問したときに「あなたも菌を持っていて、気付かないだけなのかもしれない」と言われて、はっとした。誰でも理解しやすい文章に改める必要があるだろう。
=太田= ハンセン病の隔離政策を違憲とした判決は一体何だったのかと、今回の問題で大きなショックを受けた。
=江口= (頭を下げて)微力ながら啓発活動に携わらせていただききたい。
(12/21)
http://mytown.asahi.com/kumamoto/news02.asp?kiji=3012
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