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厚生労働省が先月打ち出した「保険料水準固定方式」について、現役世代の最終保険料は与党内の調整で18%(現在、13・58%、労使折半)に落ち着きそうだ。上限を設けること自体には異論はなかったが、厚労省が当初示した20%では「企業負担が重すぎる」との反対が強かったからだ。
だが、その代わりに与党は保険料算定の基準である「標準報酬月額」の上限引き上げを持ち出した。
与党内で合意した現役世代の所得の50%以上の給付水準を維持するための財政の帳尻合わせにすぎず、賛成できない。取りやすいところから取る安易さだけが目に付く。
年金改革が叫ばれてきたのは、少子高齢化に伴い、現役世代の保険料負担が極端に増える恐れが出てきたため、高齢世代とのバランスをとる必要からのはずだ。現役世代の負担増の抑制こそ、改革の基本である。
まず、上限引き上げが本当に必要かどうかを含め、年金財政全体を国民や民間機関が検証できるよう、関係する全データを公表すべきだ。
「50%」も、前提となる出生率が予想以上に下がれば、たちまち実現不可能になる。50%にこだわる必要はない。どうしてもというならば別の手だてを講じるべきである。
その一つは、年間給付費総額の五倍もある年金積立金の活用だ。
厚労省案は一世紀かけて一年分に減らすとしているが、悠長すぎる。
団塊の世代が年金受給のピークを過ぎれば、世代間の人口比率の大きな差はない。巨額の積立金は不必要だ。取り崩しを急ぐべきである。
もうひとつの課題である基礎年金の国庫負担割合について、与党は来年度から五年間に、現在の三分の一から二分の一への段階的引き上げに合意しているが、それに必要な二兆七千億円の財源を明示すべきだ。
年内に二〇〇六年度までの財源を示すとしており、公的年金控除の縮小などの案が出されている。所得の多い高齢者には応分の負担を求める意味において、ある程度はやむを得ないだろう。だが、それでも財源不足は明らかだ。必要な財源確保のために将来の税方式導入の論議を避けてはならない。
与党の中に早くも来年夏の参院選を意識して、抜本改革を先送りする動きが出始めた。そのような姑息(こそく)なことをしても、国民に見透かされることを忘れてはならない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20031212/col_____sha_____002.shtml