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【月額6万6500円に】
政府・与党合意の年金改革では、会社員の厚生年金保険料を年収の13.58%から18%にまで引き上げる。
同時に、年収が1000万円以上のサラリーマンの場合は、本人が負担する保険料の最高額が月額約4万2000円から約6万6500円まで引き上げられる。
「ボーナスを含めると年間1万5000−38万円程度の負担増。保険料を折半して負担している企業の負担分を含めれば、最高76万円も負担が増えることになる」(金融アナリスト)
庶民に多大な負担を強いると、将来の給付水準は現役世代の所得の50%以上の給付が維持できる。ただ、現在の給付水準である59.4%よりは低くなることは確実だ。
【財源逼迫(ひっぱく)】
ただ、国民の負担増は保険料の増加だけでは済まない。
政府・与党には、「破綻(はたん)状態にある年金制度を維持するには、保険料を引き上げるだけでは対応しきれない」との共通認識があるからだ。
年金の財源は、個人と企業から集められる保険料と、国が支払う国庫負担で賄われている。
与党合意では、保険料率を引き上げたうえで、国庫負担の割合も今後5年間かけて、3分の1から2分の1に引き上げることが大前提である。
この国庫負担の引き上げには、約2兆7000億円の財源が必要で、政府・与党は増税に手をつけざるをえないのだ。
【増税へ】
政府・与党は国庫負担引き上げの財源として、とりあえず3年間で1兆3500億円を確保する方針を確認。所得税の公的年金等控除や老年者控除の縮小などを検討する。
ただ、与党内からも「こうした控除を縮小しても、確保できる財源は年間2000億円程度。公明党が要望する所得税の定率減税廃止で約2兆5000億円の財源を工面する案の復活もありうる」との声がある。
16年度税制改革では、年金財政確保以外の目的でも、各種の増税策が検討されている。
個人住民税の均等割りの引き上げでは、夫婦でみると年間最大1万円の増税となるケースも出てきそう。現在、10年間で最大500万円の控除が認められている住宅ローン減税も、縮小される方向で議論が進む。
【消費税アップも】
むろん、小泉純一郎首相が「任期中はやらない」と明言する消費税アップも焦点だ。
「安定的な財源確保には、将来的には消費税率の引き上げも検討せざるを得ない」(与党幹部)との方向性は既成事実となりつつある。
【財界の反発】
国民負担増加策に対し、大きく反発の声を上げているのが財界である。
14年度に日本国内の企業が負担した厚生年金保険料は、実に10兆1000億円。9兆5000億円の法人税負担を上回る額に達している。
16年度税制改革では、連結納税制度を利用した法人税率を2%上乗せする連結付加税が廃止されるなど、企業活動に向けた配慮はあるものの、経営者の間では「負担が一層重くなる」との印象はぬぐえない。
日本経団連などは昨9日、「年金保険料引き上げ反対協議会」を設立。奥田碩(ひろし)会長は「日本には持続可能な社会保障制度の構築が不可欠。抜本的な改革がないまま、保険料を引き上げることには絶対に反対」と主張、政府・与党の方針を批判した。
自動車メーカーの労組幹部はこう言い、不安はいっこうに消えない。
「年金負担が増えると、企業収益が厳しくなる。結局は雇用抑制や賃金カットなどのリストラに手をつけざるをえなくなる。これに個人の年金保険料の負担と増税が加わるとなれば、労働者の生活にも悪影響をもたらすことは確実だ」
【失政のツケ】
年金を含めた国家財政の悪化は、歴代政権の無責任な財政運営が原因。
「景気対策」と称した地方での非効率な公共事業の継続や、地方自治体への過大な補助金、抜本的な年金改革の先送り…。そのツケが国民や企業への負担増加となって顕在化している。
産業界や識者の間には「政府・与党はまず、長期的に継続可能な年金制度や国家財政の在り方を具体的に示し、国民の将来不安を取り除くべきだ」との指摘は多い。
青写真もないまま、小手先の負担増を求めるだけでは、長引くデフレ不況に泣く庶民には政府への信頼回復や、財布のヒモを緩めて消費意欲が増えるはずがない。
ZAKZAK 2003/12/10
http://www.zakzak.co.jp/society/top/t-2003_12/1t2003121021.html