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[専門医制度]「『看板に偽りあり』では困る」
医療事故が後を絶たない。
未熟な新人医師だけでなく、専門医といわれる医師のミスも多い。それも、基本的な技量を欠いたケースが目につく。
医療が高度化・複雑化する中で、専門的な技術と知識を備えた医師の確保が大きな課題となっている。
だが、専門医を養成し、認定する仕組みづくりは立ち遅れている。診療分野の学会ごとに認定基準はばらばらだ。診療能力を厳しく問う学会がある一方、審査が甘い学会もあり、“玉石混交”だ。
来年度からは、新人医師の臨床研修が法律で義務化される。基本的な診療能力をしっかり身につけさせるのが目的で、実に三十六年ぶりの改革となる。
新人医師の次は、専門医の番だ。医療の質の向上には、基礎から専門まで含めた、医師の養成システム全体の見直しが欠かせない。
専門医制度として最も古いのは、約四十年前に設けられた麻酔指導医制度である。その後、各学会が独自に専門医制度を作り上げてきた。問題は、研修方法や認定基準が統一されていないことだ。
医師の数は二十六万人だが、専門医は延べ二十万人を超す。一人で複数の専門医資格を持つ医師がいるためだが、実力の伴わない専門医も少なくない。
専門医が問題を起こしても、学会が資格を取り消すことは、めったにない。資格の更新も、学会などに出席するだけで認めるところがある。“品質保証”の視点が欠落している。
医療の規制緩和により、昨年から専門医資格を広告できるようになった。患者が医療機関を選ぶ目安にもなる。それだけに、「看板に偽りあり」では困る。
米国では、学会や医師会、有識者などで構成する第三者機関が、専門医の質をチェックしている。日本でも、研修や試験を厳格化する動きが出始めたが、まだ一部に過ぎない。医療の質を保証する、真の専門医制度の確立が急務だ。
個々の学会による私的な認定制度にとどまる限り、専門医の質の向上は望めない。第三者機関による客観的な認定制度を、早く整備してもらいたい。
専門性を考慮しない、出来高払いの診療報酬制度も見直す必要がある。通常の診療行為では、優れた専門医であろうと新米医師であろうと、診療報酬に違いはない。努力して技量を磨く医師が評価される仕組みにすべきだ。
そのためには、医療の情報公開も欠かせない。手術件数や治療成績などが明らかになれば、患者自身が腕のいい医師を選択できるようになる。
名ばかりの専門医は要らない。