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■弁護士 鈴木政俊氏
——治安の悪化をどう受け止めているか。
はっと気づいたら最悪の事態になっていた。治安の良さは水や空気のように自然に手に入ると思ってきた。警察だけではなく、市民たちも考え直すべきだ。例えば、少年非行のメルクマール(指標)は夜間はいかいと万引だ。親に万引を連絡しても「書棚の並べ方が悪い」とか「金を払えばいい」とか言われ、逆に書店が攻撃されたりする。少年に善悪をきちんと教える地域の目がなくなってきた。自分たちの地域は、自分たちの手で守るという自己責任の感覚が必要な時だ。
——地域の目をどう養うのか。
父親が地域や学校に姿を見せなくなって久しい。今の父親は子どもの友達の顔を知らないから、地域で声を掛けることもできない。だから「おやじの会」をつくった。おやじの会では子どもと父親が一緒に活動し、互いに顔と名前を覚え、声掛けができるようになる。夜遊びをする子どもも、顔見知りの父親の言うことならよく聞く。地域で声を掛けられる間柄をつくることが大切だ。万引、痴漢、空き巣などの犯罪は、住民の目があればほかへ行ってしまう。
——行政や警察に望むことは。
広い意味での法教育をしてもらいたい。子どもはもちろん、親も教師も犯罪現場を知らない。薬物や銃器の問題だけではなく、ヤミ金事件を取り上げて金銭感覚を教えるとか、少年犯罪の実態を教えるとか、生の声を聞かせてほしい。チラシを配る啓発活動はほとんど効果がない。単発的な行事ではなく、教育カリキュラムとして取り入れてもいいと思う。
すずき・まさとし 1950年山形県生まれ。中央大卒。90年に弁護士登録。日本弁護士連合会の民事介入暴力対策委員。東京都杉並区の「阿佐ケ谷中学校おやじの会」代表。都の「子どもを犯罪に巻き込まないための方策を提言する会」メンバーも務めている。53歳。
■日本女子大教授 清永賢二氏
——日本の治安の現状を、どう見ているのか。
質の悪い犯罪が増えて件数全体を押し上げた。動機や手口など従来の犯罪のタイプがくずれ、犯人の検挙が難しくなっている。外国人、少年や女性の犯罪も目立つ。住民が平和に暮らす住宅街でも、東京都世田谷区の一家殺害事件のような凶悪事件が起きる。検挙率が低いので、犯罪の“犯し得”のような雰囲気が広がっている。
——治安悪化の背景は。
一つには、国際化の進展がある。日本では出稼ぎに流入してくる外国人を雇い、住まわせるきちんとしたシステムづくりが立ち遅れている。食えなければ、正規に入国した外国人でも罪を犯す。不況の影響も大きい。遊ぶ金欲しさから、居場所がない若者たちが犯罪に走っている。もう一つは人間関係が希薄になり、互いに見守り合う力が弱くなったこと。犯罪との戦いとは情報戦争だ。警察の情報源は住民だったが、その情報が取れなくなった。日本の安全神話がつくり出した日本人の無防備さもある。
——今、必要なことは。
犯罪の多くは、学校、家庭、職場、地域といった複雑に入り組んだ日常生活のプレートが、きしんだり、ひずんだりしてできたすき間から噴き出している。だからこそ、治安を考えるべき主役は市民であるべきだ。警察は自治体や市民に犯罪情報を提供し、自治体は治安を守る組織や防犯灯、防犯カメラといった“安全資源”を提供する。また市民も身の回りの情報を警察に提供したり、町内会で活動するなど責任を自覚するべきだ。これからの時代は、三者が一体となった取り組みが重要だと考えている。
きよなが・けんじ 1943年大阪府生まれ。東京学芸大大学院修士課程修了。警察庁科学警察研究所犯罪予防研究室長を経て、94年日本女子大人間社会学部教授。専門は犯罪行動生態学。2002年に設立され、全国安全都市首長サミットを主催した「全国安全都市会議」議長。60歳。
◇全国安全都市首長サミット
安全なまちづくりの連携を深めようと組織された全国安全都市会議などが主催し、治安確保に向けた自治体の連携や安全を守る人材の育成と活用などをテーマに開かれたシンポジウム。全国40前後の自治体が参加。首長や市民、警察関係者が治安問題を考えた。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20031204/mng_____kakushin001.shtml