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東証1部上場企業「武富士」をめぐる数々の事件が表面化したきっかけは、暴力団や右翼団体の対応などの「裏業務」を担ってきた元課長の中川一博容疑者(42)が同社から持ち出した膨大な内部資料だった。「盗聴は絶対的権限を持つ会長の指示で逆らえなかった」。中川元課長の供述通り、トップの武井保雄会長が盗聴にかかわっていた疑いで逮捕された。
公判などでの中川元課長の発言によると、武井会長には「右翼は暴力団に弱い。暴力団は警察に弱い。警察は右翼に弱い。この関係をうまく使ってトラブルを処理しろ」と指示を受けていたという。
中川元課長は借金が4000万円を超え無断欠勤も続き、02年9月に懲戒解雇された。
暴力団対応など危険な業務を担ったにもかかわらず、退職金が支払われないことが不満だった。「内部資料を持ち出して金に換えることを思いついた」とされる。
資料はまず盗聴事件の被害者となったフリージャーナリスト山岡俊介さん(44)に持ち込んだ。「闇社会」にも出回り、武富士に資料の買い取りを迫る恐喝未遂事件にも発展した。中川元課長自身、恐喝未遂事件の共犯として逮捕され、資料を持ち出したとして業務上横領容疑で再逮捕された。
中川元課長は自らの業務上横領事件の裁判などで、ジャーナリストら6人を盗聴していたことを明かし、被害を受けたジャーナリストが警視庁に告訴した。
今年11月14日、警視庁は盗聴容疑で中川元課長や元専務の小瀧國夫容疑者ら5人の逮捕に踏み切った。武富士本社の家宅捜索は2日間に及び、武井会長室からも多数の資料を押収した。(12/02 19:34)