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2003年12月02日(火) 10時55分

「武富士」武井会長を逮捕 組織的盗聴を指示の疑い家宅捜索を終え、武富士の武井会長宅を出る警視庁のワゴン車=2日午後6時、東京都杉並区高井戸西産経新聞

 消費者金融大手「武富士」(東京)の元社員らによる盗聴事件で、警視庁捜査二課は2日、盗聴を指示した疑いが強まったとして電気通信事業法違反(盗聴)の疑いで、会長の武井保雄容疑者(73)を逮捕した。

 捜査二課は、会長室などから押収した資料を分析し武富士関係者から事情聴取を重ねた結果、武井容疑者の指示で組織的に盗聴が行われたと判断、事件の全容解明を目指す。

 調べによると、武井容疑者は元武富士渉外担当、中川一博容疑者(42)らに指示し、2000年12月から01年2月にかけて、東京都世田谷区のフリージャーナリスト、山岡俊介さん(44)の自宅の電話回線に盗聴器を仕掛け、通話内容を録音した疑いが持たれている。

 元武富士専務の小滝国夫容疑者(61)も、探偵会社を中川容疑者に紹介し、盗聴をほう助した疑いで逮捕された。

 ≪逮捕の武井・武富士会長≫

 「仕事は無限大の可能性があるから面白いんだ」。盗聴容疑で逮捕された「武富士」会長の武井保雄容疑者(73)は、周囲によくこう話していた。創業以来30年余りで貸付残高1兆6760億円に上る東証一部上場の大企業に。経営手腕は高く評価される一方、絶対的なワンマンぶりへの批判も強く、社内での盗聴など黒いうわさも絶えなかった。

 1966年、36歳の時、武富士前身の「富士商事」を設立。それまでの経歴は判然としないが、ヤミ米販売で事業資金を手にしたともいわれる。

 創業当時、団地を回り、主婦をターゲットに融資する"団地金融"を始めた。「台所、便所を掃除していない主婦には貸すな」「子供にきちんと洗濯した服を着せていれば大丈夫だ」と社員に言い聞かせた。

 元社員は「人を見る目は本当に鋭く、納得させられる指示ばかりだった」と振り返る。

 70年代以降、大きな社会問題となった「サラ金地獄」。武富士も批判を受けたが、吸収合併を進め、80年代には業界トップに。武井会長も93年には長者番付1位となった。

 支店には額に入れた武井会長の写真が掲げられ、「出勤、退社時に(写真に)あいさつを欠かせなかった」と元社員の1人。社員誰もが武井会長に直接手紙を送ることができ、現場の声を大切にする一方、気に入らない社員を解雇することもたびたびだった。

 「会社の電話は盗聴されている」とのうわさは社内では有名で、元社員は「聞かれたくない内容は携帯電話か外の公衆電話を使った」と語る。

 武富士に絡んでは、過去にはいくつかの疑惑も取りざたされ、96年、未公開株を大蔵省(当時)の元銀行局長や元警視総監らに本人や親族名義で譲渡していたことが発覚。また、関連会社によるJR京都駅前の土地買収では、暴力団関係者との関係が指摘されたことがあった。

 ≪警視庁OB採用や犯歴照会≫

 消費者金融最大手「武富士」は、元警視総監を顧問として迎え入れたのを契機に、警視庁OBを数多く採用してきた。暴力団関係者らとの交渉役などをさせたほか、警察人脈を使って犯歴データを収集、問題化したことも。警視庁内部からも「癒着と疑われても仕方ない」との声も出ていた。

 武富士が元警視総監の福田勝一氏(故人)を非常勤顧問に迎えたのは1990年代初め。顧問料は月約30万円だったが、1996年には未公開株1万数千株を譲渡されていたことが表面化した。

 関係者によると、武富士側は福田氏から知能犯や暴力団の捜査経歴を持つ元捜査員を紹介され、次々に社員として採用した。

 94年に採用された警視庁OBは、逮捕された武井保雄会長の指示で95年ごろから、同社を攻撃するために街宣活動を繰り返した右翼団体や暴力団の幹部との折衝にあたったという。

 「闇の勢力に詳しい元捜査員はトラブル解決に最適の人材。会長側近の用心棒のようなもの」。内部事情に詳しい関係者はこう解説する。

 さらに同社は警視庁との人脈を生かし、新規採用者や顧客の犯歴データを収集し業務に活用。警視正ら3人が捜査情報を漏らすなどしていたことが発覚した。

 警視庁は7月に3人を処分したが、3人を含む警察官14人が武富士側から950枚以上のビール券を受け取っていたことも判明。武富士が複数の警視庁現職幹部らとも深いつながりがあることを浮き彫りにした。

 ある捜査員は「長年続いた持ちつ持たれつのゆがんだ関係は、すっぱり断ち切るべきだ」と話した。

 ≪武富士盗聴事件の経過≫

 武富士盗聴事件の経過は次の通り。

 ・2002年10月 ジャーナリストが雑誌上で「武富士に電話を盗聴された」

 ・03年5月 週刊誌が「警視庁の内部資料が武富士に流出。警察幹部にビール券」と報道

 ・5月20日 警視庁は、武富士からの1億円恐喝未遂容疑で元社員、中川一博容疑者らを逮捕

 ・5月21日 参院個人情報保護特別委員会で、警察庁の吉村博人官房長が内部資料流出問題の厳正調査を約束

 ・6月9日 中川容疑者が東京地裁の拘置理由開示の法廷で武井保雄容疑者の指示で盗聴したと陳述

 ・6月10日 業務上横領容疑で中川容疑者を再逮捕

 ・6月13日 「全国ヤミ金融対策会議」弁護士が、電気通信事業法違反で武井会長らの告発状提出

 ・6月19日 警視庁が武井会長に対するジャーナリストからの同法違反容疑の告訴状を受理

 ・6月27日 中川容疑者が盗聴録音テープ71本を警視庁に提出

 ・7月18日 武富士への内部資料流出で、警視庁は地方公務員法違反容疑で同庁警視正を書類送検

 ・7月22日 警察庁は、警視正ら14人が武富士からビール券950枚以上を受け取っていたと発表

 ・10月24日 警視庁が電気通信事業法違反容疑で横浜市の探偵事務所を捜索

 ・11月14日 同法違反容疑などで元武富士専務、小滝国夫容疑者、中川容疑者ら5人を逮捕

 ・12月2日 武井容疑者を同法違反容疑で逮捕

http://www.sankei.co.jp/news/031202/1202sha087.htm