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2003年12月01日(月) 21時56分

<宿泊拒否>ホテル経営会社が会見 「説明不足の熊本県に責任」毎日新聞

 熊本県南小国町の「アイレディース宮殿黒川温泉ホテル」が国立ハンセン病療養所「菊池恵楓(けいふう)園」に入所する元患者らの宿泊を拒否した問題で、ホテルを経営する「アイスター」(東京都)が1日、ホテルで会見。「宿泊日直前に入所者と知り、他の宿泊客に説明する余裕がなかった。宿泊拒否は当然の判断で、説明不足の県側に責任がある」との見解を示した。しかし、結果的に人権侵害になったとして同日夜、同園を訪れて謝罪。元患者らはこれを苦渋の末、受け入れた。

 会見には前広報室長の江口忠雄・新社長と前田篤子・同ホテル総支配人らが出席。西山栄一前社長が「体力の限界」などを理由に辞任したと発表した。引責辞任ではないという。

 江口新社長は「世間を騒がせて申し訳ない」と述べ、「人権侵害と宿泊拒否は別問題。人権を無視した考えはまったくない。宿泊拒否はホテルとして当然の判断だった」と説明。理由として「宿泊者が入所者と知ったのは宿泊日直前で、認識不足もあって他の客と調整する時間がなかった。予約から2カ月間(入所者であると)ひた隠しにした県に責任がある」と主張した。

 一方で、人権侵害の問題については「まだハンセン病が一般的に認識されていないと感じていた。こういう機会があって初めて認識を改めないといけないと思った。今後は全社挙げて啓発に参加することで責任を果たしたい」と語った。

 前田総支配人も宿泊拒否は「認識不足だった」としながらも「県の対応は私たちには不親切。予約時に説明する必要があったと思う」と述べた。

 入所者の宿泊は、県健康づくり推進課が9月に「ふるさと訪問事業」として同課の名前で予約。11月7日に宿泊者名簿をファクスした際、ホテルに入所者だと伝えた。ホテル側は同13日に「他の客に迷惑」などと宿泊拒否。県側は入所者が治癒しているなどと再三、受け入れを求めたがホテル側は「社の方針」の一点張りで、同14日に県の担当者が本社に出向いて説得したが撤回されず、18日に県が公表した。同社の主張に対し県は「そもそも宿泊に際し、既に治癒した元患者であることを説明する必要性はない」としている。【石川淳一】

◇ホテル経営会社が療養所入所者に謝罪

 「満足できる内容ではないが、高齢の入所者にこれ以上心労をかけられない」。江口新社長から謝罪文を受け取った菊池恵楓園入所者自治会の太田明会長(60)の表情は苦渋に満ちていた。

 この日、江口新社長は入所者を前に「大変な心労を煩わせ、心よりおわび申し上げます」と謝罪。「予約時点で恵楓園の方々と分かっていれば、他のお客様とコミュニケーションをとってお互い納得いく形で喜んでもらえた」と語った。「責任は誰にあるのか」と尋ねられた前田総支配人は「責任というよりもこれからの方が大事」とはぐらかした。

 怒りが治まったわけではない。しかし、11月20日に前田総支配人の謝罪文の受け取りを拒否して以来、園には入所者を中傷する電話、ファクスが100件近くあった。「金目的だろう」「死ね」などと書かれたものもあり、2次的な人権侵害も起きていた。【阿部周一、米岡紘子】(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031202-00000073-mai-soci