2003年11月30日(日) 00時00分
管理要領機能せず/県の生活保護情報流出会見で謝罪する杉山純・健康福祉総室長(中央)ら=県庁で(朝日新聞・)
県の生活保護情報 2度流出
職員向け研修改善へ 県が管理する生活保護情報が2度にわたり外部に流出した。今月19日に52世帯分の書類が車内から盗まれ、4年前には3世帯分が列車内に置き忘れられた。県は生活保護情報の取り扱い要領を定めていたが、盗まれた職員はその要領をまったく守っていなかった。同じ過ちがなぜ繰り返されたのか。
●不祥事相次ぐ
「大変です。車からケース記録が盗まれました」。11月19日朝、県志太榛原健康福祉センターの男性職員(40)は電話で上司にそう報告した。自宅駐車場に止めていた車の窓ガラスが割られ、中にあった生活保護情報の書類がなくなっていた。
盗まれたのは「ケース記録」と呼ばれる生活保護情報。生活保護を受けている人の住所、氏名、職業、収入、家族構成などの個人情報が記されていた。
あってはならない事件だが、4年前にも同様の不祥事が起きていた。県の説明では、99年5月、御殿場健康福祉センターの生活保護担当職員がケース記録を列車内に置き忘れた。どちらの書類もまだ見つかっていない。
●気のゆるみ
4年前の不祥事の後、県は99年8月、生活保護情報の取り扱い要領を定めた。庁舎外に持ち出す際には、管理責任者の承認を得る。鍵をかけた専用の運搬ケースに入れて、公用車で運ぶ。要領は情報管理の徹底を求めていた。
ところが、今年11月に盗難にあった職員は「恒常的に」(県健康福祉部)上司に無断で書類を家に持ち帰っていた。書類は運搬ケースに入りきらなかったので、私物のバッグと手提げ袋も活用。上司も持ち帰りに気づいていながら、注意するのを怠っていた。
杉山純・健康福祉総室長は「職員に気のゆるみがあった」と認めた。
●行政の情報管理
県は課税台帳や医療カルテなど業務に必要な個人情報を大量に持っている。情報を守るため、県は今年4月、個人情報保護条例を施行した。「個人情報の漏洩(ろうえい)を防止する措置を講じる」など、情報の適正な管理を宣言している。
この条例の運用に当たって、県は昨年10月から全職員を対象に計24回の研修会を開いた。出先機関にも出向いて研修を実施してきたが、盗難にあった職員が研修を受けたかどうかは確認できないという。
個人情報の外部流出を重く見た県情報公開室は、研修の回数を増やすとともに、研修内容をより実務に沿った具体的なものにしていく方針だ。
行政が保有する個人情報について、神戸市にある甲南大の園田寿教授(情報法)は「情報の漏洩はすぐれて人の問題であり、マニュアルなどで情報管理の技術を高めてもなかなか防げない。職員の意識を改めない限り、同じような問題は続くだろう」と指摘している。
(11/30)
http://mytown.asahi.com/shizuoka/news01.asp?kiji=9983
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