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2003年11月28日(金) 00時00分

デジタル放送 視聴者の利益忘れるな 東京新聞

 地上波テレビのデジタル放送が十二月一日から東京、名古屋、大阪の三大都市圏で始まる。生活にも大きな影響を与える事業だけに、メリットが実感できる放送を期待したい。

 クリスマス商戦でにぎわう家電店の売り場にはデジタル放送対応テレビが置かれ、華やかな売り込みが繰り広げられているが、消費者にはいまひとつとまどいがあるようだ。

 比較的安価な受信チューナーを利用して現在のテレビで見る方法もあるが、デジタル放送の迫力を生かせる大型画面のデジタル対応テレビを買おうとすると、まだ一台何十万円という値段だ。仮に購入するにしても「放送開始後に実際の様子を見て」という人が多いに違いない。

 八年後の二〇一一年に全国で完全移行することを目標に始まったデジタル化の事業は国が混信対策などに千八百億円以上を、放送局側も合計約一兆円に上る巨額の費用を負担する大事業だ。

 すでに放送機器に対するデジタル化投資に踏み切っている各放送局や受信機を売るメーカーは事業を成功させようと懸命だ。国民にとっても、テレビは生活に密着しているだけにデジタル化に無関心ではいられない。

 デジタルというだけなら、これまでにもBS(放送衛星)デジタル放送、CS(通信衛星)放送とすでに二種類の放送が行われているが、普及はいまひとつだ。

 双方向性や画面の鮮明化などデジタル化の利点は数多く挙げられている。しかし、視聴者にとっての利点はいまひとつ限定的なものだったということだろう。

 今後地上波のデジタル化を展開したとしても、よほど魅力ある番組を提供できなければ、視聴者を高価なデジタル対応テレビに買い替えさせることは難しいに違いない。

 もし、本当に魅力ある番組を提供できなければ、八年に期限を切った強制的なデジタル化事業に対して視聴者の不満が、高まる恐れもある。

 全国展開にあたっては、本当に視聴者の生活に快適さを与える放送内容を試行錯誤で築き上げる関係者の懸命な努力が必要だ。技術変化はますます急速になっている。デジタルの放送内容をインターネットで流すことも、今後の課題だろう。

 インターネットの高速回線に限ってみても二〇〇七年末の利用者数は六千万人近いと予測されている。しがらみにとらわれず、国民の生活変化をとらえたデジタル化事業を展開してもらいたい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20031128/col_____sha_____003.shtml