2003年11月25日(火) 14時28分
床屋さん存亡のピンチ 8割が売り上げ減 宮城(河北新報)
「カリスマ」美容師の登場などで美容業界が脚光を浴びる一方、地域の床屋(理容店)が危機に直面している。美容店に男性客を奪われている上、同業の大手チェーン店が仕掛ける価格破壊が追い打ちをかける。経営者の高齢化が進み、近い将来理容店が激減するというデータもあり、業界は生き残りをかけて「変革」に動きだした。
<奮起促す冊子>
「あなたは変わるつもりがありますか」
宮城県理容生活衛生同業組合(西條郁男理事長)は昨年夏、「未来(あす)への歩み」と題する冊子を作製。その表紙で組合員にこう呼び掛けた。
「あなたの店はマンネリ化していないか」「職人気質が成長を妨げていないか」。腕が良い半面、経営感覚が乏しいとされるベテラン理容師たちに奮起を促す内容にした。
仙台には理容組合に加盟しない全国チェーン店が続々と進出し、一般的な料金の半値以下で攻勢をかける。ユニセックス化で美容院に通う男性も増え、「床屋離れ」は確実に進んでいる。
<大半が60歳代>
青葉区の学生街に40年来店を構える理容店の店主(64)は「職人として歯を食いしばって腕を売っていくか、プライドを捨てて料金を下げるか、ぎりぎりの状態だ」と打ち明ける。
県理容組合の組合員数は現在2225人。1957年に発足してしばらくは組織を拡大できたが、78年の約3000人をピークに減少が続く。組合の調査では、組合員の8割が売り上げの減少に悩んでいる実態が明るみに出た。
組合員の高齢化も進む。50代以上が約60%を占め、しかもその多くが60代に集中する。40歳以下はわずか14%にとどまり、全体の半数が後継者難に直面している。
<サービス工夫>
こうした厳しい状況をみて、組合も動きだした。本年度から介護分野への進出を目指し「ケア理容師養成研修」をスタート。仙台では、訪問理容や高齢者の送迎サービスをする店も登場した。
女性向けのエステティックの充実や営業時間の延長など、「お客さま本意」の姿勢を前面に出す店も増えている。
地域での存在感をアピールしようと、女性や子供を犯罪から守る緊急時の避難所として店舗を提供する取り組みも始めた。県警と連携し、1000を超す店が参加している。
西條理事長は「昔気質の職人スタイルはもはや通用しない。散髪以外のプラスアルファを工夫し、お客さまに『やっぱり床屋じゃないと』と言われるよう変身してほしい」と訴える。
[河北新報 2003年11月25日](河北新報)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031125-00000012-khk-toh