2003年11月19日(水) 19時20分
郡山の強盗婦女暴行 逆送の「15歳」ら、あす判決−−厳罰、更生で対立 /福島(毎日新聞)
◇改正少年法施行後、全国初
刑事罰の適用年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げた改正少年法の施行(01年4月)後、全国で初めて15歳少年が逆送・起訴された郡山市の強盗婦女暴行事件の判決公判が、20日午前10時から福島地裁郡山支部(宍戸充裁判長)で開かれる。保護処分による健全育成・更生か、厳罰化で規範意識を育てるべきか——。裁判は少年法の理念を巡って検察側、弁護側が対立しており、裁判所の判断は今後の少年法見直し論議や、他事件で起訴された年少少年(14、15歳)の処遇に大きな影響を与えそうだ。
起訴されたのはいずれも本宮町生まれ住所不定、無職の16、17歳の2少年(逆送時15、16歳)。2人は住所不定、元新聞外交員、中島順司被告(35)=1審で懲役11年、最高裁に上告中=と共謀し、昨年9月、郡山市内の20代女性のアパートに押し入り、翌日夕まで監禁して性的暴行を加え、現金やキャッシュカード入りの財布を奪った強盗婦女暴行、監禁などの罪に問われている。
2少年とも起訴事実を認めており、裁判は主に、少年の更生可能性といった情状面や、改正少年法の趣旨をどう理解して少年を処遇すべきかを巡って争われた。
成人と同じく、淡々と事実立証を進めた検察側は8月27日の論告公判で、「(厳罰化を柱とする)改正少年法は、少年といえども犯罪を犯せば厳しい処罰を受けることを明示し、規範意識を育てるのが狙い」と主張。「(少年院などの)保護処分では更生不可能」として懲役4〜8年の不定期刑を求刑した。
一方弁護側は、「少年の健全育成を目指すという少年法の理念は、改正によっても変っていない」と主張。その上で、弁護側が証人申請した元家裁調査官などの調査結果を根拠に「先輩や教師からの暴行が原因で、自尊感情を持てず、人間不信に陥ったのが犯行の背景。非行性は進んでおらず更生の可能性がある以上、少年院での処遇がふさわしい」として、少年法55条に基づく家裁再移送を求めた。
少年法55条は、「裁判所が保護処分相当と認めるときは、決定で家裁に移送しなければならない」と定めている。地裁が再移送を決定した場合、家裁は再度少年審判を開いて少年の処遇を決定する=図参照=が、再び検察庁に逆送し刑事裁判に付される堂堂巡りになる可能性もある。【斉藤望】
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◆検察側、弁護側の主張◆
<少年の処遇>
・検察側=懲役4〜8年の不定期刑を求刑
・弁護側=少年院での教育的処遇が相当で家裁への再移送を要求
<改正少年法の考え方>
・検察側=少年といえども罪を犯せば厳しい処分を受けることを明示し、規範意識のかん養を狙ったもの
・弁護側=非行の外形よりも少年の生育環境など情状面を重視し、健全育成・更生を目指す理念は不変
◆少年法改正のポイント◆
(1)刑事処分年齢の引き下げ
可罰年齢を16歳以上から14歳以上へ。
(2)原則逆送制度の導入
16歳以上で故意に人命を奪った少年は原則として検察官逆送し、刑事裁判に。
(3)少年審判への検察官関与
殺人など重大犯罪の少年審判では、家裁の判断で検察官の立ち会いが可能に。
(この記事には図「少年処遇の流れ」があります)(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20031119-00000001-mai-l07