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2003年11月17日(月) 00時00分

法廷メモランダム−少額訴訟−朝日新聞・

 京都簡裁判事 安永 泰造さん

 同じテーブルで解決探る

 2002年7月。京都簡易裁判所のラウンドテーブル法廷(円卓法廷)=写真。賃貸マンションの敷金返還を求める裁判が行われている。京都簡裁の少額訴訟のなかでは、敷金の返還を求める訴訟が最も多い。

 借り主である原告のAさんは「敷金は全額返還されると思っていたのに、部屋のリフォーム代やクリーニング代を負担させられたのは、納得がいかない」と主張。一方、家主である被告のBさんは「契約書には原状回復費用は借り主の負担とする」とあることを理由に敷金の返還に応じない。

 裁判官は、最初に、1回の審理だけで判決する少額訴訟の手続きを説明したうえで審理に入った。部屋の壁などの変色が、通常の使用による自然損耗にあたるかどうかが争点になった。

 双方から提出された証拠(契約書等)を検討し、Aさん、Bさんから部屋の使用状況などを聞いて審理を終えた。この間約1時間。その後、裁判官は、司法委員とも協議して、部屋の壁の汚れがAさんの子供の落書きに原因があることを理由に、敷金から2割を控除した金額を返還する内容の和解案を勧告した。Aさん、Bさんは、和解案を受け入れ、裁判は和解で終わった。02年度の京都簡裁での少額訴訟の場合、約41%の事件が和解で解決している。

 少額訴訟の法廷は、通常の法廷とは随分様子が違う。背広姿の裁判官と書記官、司法委員、それに原告・被告の全員が同じテーブルについて話をする。

 裁判官は、当事者に主張と立証を形式的に分けることを求めず、できるだけ自由に話ができるような訴訟指揮をする。ときには、当事者の双方とも感情的になり、争点と関係ない点で議論になる。そんなとき裁判官は、本来の争点に戻すのに一苦労する。

 先に紹介した敷金返還のケースは幸い1回の審理だけで終わったが、少額訴訟にも限界はある。当事者の準備が不十分で、主張や証拠が十分そろっていない場合や、内容が複雑で争点が多い事件などは、1回の審理だけで終わるのは難しい。

 そういう限界もあるが、少額の紛争を、比較的簡易な手続きで、迅速に解決することが望まれている簡易裁判所にとって、少額訴訟はふさわしい裁判手続きである。今後も、少額訴訟がより多くの市民に利用されることを願っている。

    ◆

 安永泰造さんのプロフィル

 京都簡易裁判所判事。1949年兵庫県出身。95年大阪簡裁判事、その後鹿児島県(鹿屋)、京都府(舞鶴)で勤務。02年3月から現職。趣味はテニス、登山など。18年ぶりの優勝を心から喜ぶ阪神タイガースファン。

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http://mytown.asahi.com/kyoto/news01.asp?kiji=3519