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2003年11月15日(土) 00時00分

武富士事件 知りたい『なぜ盗聴?』 東京新聞

 金融会社の渉外担当者がジャーナリストを盗聴したのだから、「知られたくないことがあった」と考えるのは自然だ。日常的盗聴だった疑いもある。捜査のメスを中途半端でおいてはならない。

 電気通信事業法違反の疑いで警視庁に逮捕された消費者金融大手「武富士」の元幹部らは、盗聴して得た情報で何をしたのか、あるいはしようとしたのか、判然としない。

 だが、武富士はメディアや記者を相手に数々の訴訟を起こしており、批判に対して過敏な企業だといわれている。盗聴されたのが同社の問題点を追及しているジャーナリストだけに、批判封じの材料入手が目的と受け止められても仕方ない。

 もしそうだとすれば、卑劣な言論妨害である。「通信の秘密の保護」という憲法上の権利を侵害するだけでなく、民主社会の基盤を揺るがす重大な犯罪だ。個人も企業も、批判には謙虚に向き合い、誤解があれば粘り強く説明すべきなのである。

 注目されるのは、元同社専務、小滝国夫容疑者の逮捕容疑が、渉外担当の後任である中川一博容疑者に盗聴を実行する探偵事務所を紹介した盗聴幇助(ほうじょ)、という事実である。

 渉外担当は表に出したくない紛争の解決など“裏業務”を引き受ける汚れ役だ。後任に盗聴業者を紹介できたのは、自分も盗聴させていたことを物語らないか。

 それだけではない。上級幹部の指示、ないしは了承に基づく盗聴だったのではないのか、という疑いさえ抱かせる。だとすれば「隠したかったのは何か」が大きな問題として浮かび上がる。

 中川容疑者は「武井保雄会長の指示で盗聴し、結果を報告していた」と主張、弁護士らが同会長を告発している。社内稟議(りんぎ)書、探偵事務所の領収書など盗聴の証拠を持ち出した同容疑者は、前任者から「責任をすべて押しつけられないよう身の保全を考えろ」と忠告を受けた、とも説明している。

 私行上の問題もある中川容疑者を全面的には信用できないが、武富士については各種の指摘がある。右翼や暴力団とのつながり、融資金取り立ての行き過ぎなど、疑惑も報道されている。

 他方で、多くの警官が長年にわたって大量のビール券を贈られていたり、幹部警官が個人の犯罪歴情報を漏らすなど、同社と警察関係者の癒着が明るみに出ている。

 だから、捜査を中途半端に終わらせると、警察に対する不信感が高まるだろう。「なぜ盗聴?」を国民が納得するまで解明してほしい。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20031115/col_____sha_____002.shtml