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2003年11月13日(木) 00時00分

“新りそなショック”でアノ地銀も「国有化要注意」繰り延べ税金資産「1年分に圧縮」余波が直撃ZAKZAK


今月下旬に中間決算の発表が相次ぐ地銀。りそなの細谷英二会長のように前向きに自己資本を厳格化すると、「国有化」要注意の地銀が殺到する? 大手銀行に続き、地銀も揺れてきた−。りそなグループが自己資本に算入する「繰り延べ税金資産」を3年分から1年分に圧縮する。これに伴い、各地銀の「目付役」監査法人が竹中改革で「資本の水増し」と批判される税金資産の厳格化を9月中間決算で採用すると、「台所の苦しい地銀はひとたまりもない」(ベテラン公認会計士)。夕刊フジが再三指摘する関東の危ない有名地銀をはじめ、税金資産への依存度が高く、経営不振が懸念される地銀の場合、決算発表の今月下旬、りそなショックで「国有化が要注意」となってきた。

 【過小資本の地銀】

 経営不振とも密接に絡み、自己資本に占める繰り延べ税金資産の割合が高い地銀、第2地銀は現状では少なくない。

 別表のように、足利銀行や近畿大阪銀行は、中核的自己資本の100%以上を繰り延べ税金資産相当額で占める。びわこ銀行や広島総合銀行、福岡シティ銀行、長崎銀行は80%を超える。

 いずれも公表されている数字。当たり前のことだが、税金資産の割合が極端に高いからといって、直ちに資本注入−国有化されることはない。

 だが、過小資本は経営を危うくするだけに、メガバンクが今春、資本注入−国有化逃れでなりふり構わず、外資も頼りに資本増強したばかり。

 足利銀も600億円の増資を計画。近畿大阪銀は持ち株会社・りそなホールディングスを引き受け先に、3000億円を増資するなど自己資本増強に懸命である。

 【りそなショック】

 約2兆円もの公的資金再注入を受けたりそなグループは先月、経営改革プランを発表した。

 経営健全化に向け、不良債権処理の加速、繰り延べ税金資産の圧縮などを積極的な改革を断行し、9月中間決算では、1兆7000億円に上る最終赤字を計上する。

 銀行が不良債権処理の際に納めた税金は、貸付先が破綻(はたん)して損失として確定した段階で還付される。還付金をあらかじめ自己資本に計上するのが、「繰り延べ税金資産」である。

 計上額には一定の制限が設けられ、通常、向こう最大5年間の収益予想に基づく納税見込み額までとなっている。

 「過小資本に陥る銀行にとっては経営上、必要不可欠な対策。5年間、目一杯計上している銀行が多い。だから『資本の水増し』『資本のカサ上げ』と批判が根強い」(金融アナリスト)

 【りそな改革】

 りそなは今春、監査法人が税金資産を従来の「5年分」から「3年分」にカットしたことで自己資本不足に陥り、実質国有化に追い込まれた。

 ところが、9月中間期ではさらに「1年分」に圧縮して、約3500億円を損失処理する。

 この「1年分」が定着すれば、銀行経営の土台が大きく揺らぐ。とくに台所事情の厳しい地銀は「りそな基準」の波及に警戒感を強めている。

 【日本だけ大アマ】

 竹中平蔵金融・経済財政担当相が大好きなグローバルスタンダードの米国では、繰り延べ税金資産の計上は「1年分」か、中核的自己資本の「10%以内」の小さいほうしか計上できない。

 「日本の「5年分」は実に、大アマもいいところだ」(同)

 金融コンサルタントは現状をこう説明する。

 「本来、1年分しか税金資産の計上は認められていない。だが、不良債権処理で税務上、欠損を抱える多くの銀行を救済するため、特例として『おおむね5年分』の計上が認められた」

 「特例の拡大解釈で7年分まで認めてきた監査法人もある。税金資産は野放図に放置されていたのが実情だ」

 【債務超過隠し】

 バブル崩壊で巨額の不良債権を抱え、事実上、債務超過に陥る銀行も少なくないといわれる。

 「過小資本をカムフラージュするため、監査法人に料亭での接待攻勢をかけ、手心を加えてもらった。確かに銀行と監査法人の腐れ縁はあった」(都市銀幹部)

 【竹中改革】


竹中平蔵金融相 暗黙の領域に踏み込んだのが、昨年10月に竹中氏がまとめた「金融再生プログラム」だった。

 これを受け、日本公認会計士協会は税金資産の厳格化を打ち出し、血祭りに上がったのがりそな銀行だった。

 「5年分」計上を前提に自己資本比率4%を達成しようとしたが、新日本監査法人が「3年分」との結論を出した。

 「3年分」への減額の際、税金資産を過大計上する銀行は、監査法人の指摘で取り崩しを迫られる可能性があり、パニックに陥った。

 【パニック最高潮】

 そして今回、「1年分」に圧縮され、パニックは最高潮に達する。

 ある地銀幹部は「5年分でやっと持ちこたえてきた。3年分だと(国内業務に必要な自己資本比率の)4%を割り込む。1年分だと債務超過に転落する。倒産ですよ」とため息をつく。

 金融庁は、国際ルールで8%以上の自己資本比率を求められる大手銀と地域金融機関で監督方法に格差を設けている。

 ところが、日本公認会計士協会がハードランディング型の竹中改革と破綻時に責任が問われる株主代表訴訟を恐れ、地銀や第二地銀に対し、大手銀と同一基準で監査する方針を打ち出し、パニックに油をそそいだ。

 「株主代表訴訟もあって、腐れ縁を断たないと監査法人も大変。我々も『もう手加減はしないぞ』というわけです」(前出の都銀幹部)

 【地雷】

 監査法人が「5年分」を認めるのか「3年分」に減額するか。はたまた「1年分」まで圧縮するのか。

 繰り延べ税金資産の比率が高い銀行は、大幅な取り崩しが即、自己資本比率の国内基準の4%割れにつながる。いつ爆発するか分からない経営危機の「地雷」となる。

 9月中間決算は11月下旬に発表される。それまでには、税金資産をめぐる攻防の結論が出る。

 危ない関東の有名地銀をはじめ、国有化地銀はどの程度出るのか。

【繰り延べ税金資産の比率が高い地銀】

○足利銀行187.2%

○近畿大阪銀行102.3%

○びわこ銀行97.7%

○広島総合銀行 92.6%

○福岡シティ銀行89.8%

○長崎銀行 85.0%

○紀陽銀行 74.3%

○北都銀行 71.2%

○北陸銀行 66.8%

○西日本銀行63.7%

 ※比率は、中核的自己資本に

 占める繰り延べ税金資産の割

 合。2003年3月期決算時点

ZAKZAK 2003/11/13

http://www.zakzak.co.jp/society/top/t-2003_11/1t2003111320.html