2003年11月08日(土) 14時35分
「年金担保融資」を集団提訴へ(読売新聞)
高齢者の年金証書などを担保にした「年金担保融資」は違法として、債務者の支援を進める弁護士らのグループ「年金担保被害対策全国ネットワーク」(大阪市)は、こうした融資を行う貸金業者に対する全国規模の集団訴訟を起こすため、原告への参加を呼びかける。
年金担保融資の債務者は全国で10万人以上という。業者に対する訴訟では、融資を不当だと指摘しながら賠償責任は否定する判決が続いており、同ネットワークは「集団訴訟で債務者の悲惨な実態を訴え、違法性を明確に認定させたい」と、全国の弁護士や司法書士らにも協力を求める。
年金担保融資は、融資と引き換えに、業者が年金証書や年金の振込先口座の通帳などを預かり、支給のたびにほぼ全額引き出して返済金として徴収するシステム。国民年金法など関係法令は独立行政法人「福祉医療機構」(東京)の融資以外で年金受給権を担保に取ることを禁じているが、罰則規定がなく、事実上、放置されている。
同ネットワークによると、融資の違法性を問い、損害賠償を求めた訴訟の判決はこれまで2件ある。
約2年半に約370万円借り、約450万円の年金を引き出された大阪府内の老夫婦が、約550万円の損害賠償を求めた訴訟では、大阪地裁が2月、融資を「脱法行為」と指摘した。しかし、罰則規定がないことなどを理由に「社会的相当性を欠くとまでは言えない」として、利息制限法に基づく過払い金約53万円のみの支払いを命じた。老夫婦が控訴し、業者が別に和解金20万円を支払う条件で、大阪高裁で和解が成立したが、融資の違法性には触れられなかった。
約1700万円の賠償を求めた兵庫県の70歳代男性の訴訟でも、神戸地裁は8月、不当性を指摘する一方で、賠償については過払い金約360万円の返還しか認めなかった。
年金担保融資は数年前から目立つようになり、同ネットワークは、22日から熊本市で開く「全国クレジット・サラ金・ヤミ金・商工ローン被害者交流集会」や電話相談を通じ、訴訟参加者を募る。同ネットワークの植田勝博弁護士は「これまでの司法判断は、高齢者らの無知につけこむ融資の実態を無視している。現状を打破する判決を勝ち取りたい」と話している。同ネットワークの連絡先は、電06・6361・0546。(読売新聞)
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